心が乾いた時、一本の映画に救われる。
11月29日から劇場公開される『ドルフィン・マン~ジャック・マイヨール、蒼く深い海へ』(レフトリス・ハリートス監督)はそんな映画だった。
これはリュック・ベッソン監督の『グラン・ブルー』(1988年)で描かれた伝説のダイバー、ジャック・マイヨールの人物像に迫るドキュメンタリーだ。
今作品では、マイヨールの生涯にとどまらず、自然界における人間の在り方という根源的なテーマも描かれる。
死。肉体の限界。母なる自然への回帰。野望や名声の落とし穴。瞑想を通しての体と魂のバランス。そんな彼の静かな胸の内が、周囲の人々の証言とともに浮かび上がる。
スクリーンを見ている間、私は海に漂うマイヨールの影を追いながら、浮いたり潜ったり海を自在に泳ぐイルカのような気分だった。
彼の愛した生き物たちが、たゆたゆと映し出される美しい海。
見終わってからも、私は都会の雑踏をスイスイとイルカの気分ですり抜けて家路に就いたくらいだ。
『グラン・ブルー』で〝素潜り〟に命を懸ける主人公の青年のモデルとなったジャック・マイヨールは、この映画の大ヒットで世界的脚光を浴びる。
しかし、その裏で苦悩の影が忍び寄っていたことが、今回の『ドルフィン・マン』で明らかにされる。
『グラン・ブルー』とこの『ドルフィン・マン』を併せて見れば、ジャック・マイヨールの世界へさらに深くダイブできることだろう。
実は、私はジャック・マイヨールという人物をあまり知らなかった。
日本と深い縁があることも、この映画で初めて知ったくらい。
幼少期を上海租界で過ごし、その間に何度か来日したらしい。
そこで海女の素潜りを見た少年は、素潜りの魅力に目覚める。
やがて世界を放浪。フロリダで一匹のイルカとの運命的な出会いで素潜りを始める。
素潜りの探求のため、放浪先のインドでヨガ、日本では禅の修行をした。
そして1976年、人類史上初めて水深100メートルに達する偉業を達成するのだ。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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