東京都世田谷区の保坂展人区長が、PCR検査体制を大幅に拡充する方針を示し、注目を集めている。現在の1日あたりの検査能力は約360件だが、約600件に拡充し、最終的には2000~3000件の検査を目指すという。感染者の早期発見と治療につなげる狙いだ。 8月4日、保坂氏は日本記者クラブで会見を開き、「『いつでも、どこでも、何度でも』ということを最終的には目指していくべきだ」と訴えた。
「世田谷モデル」とは?
世田谷区では、8月3日時点で累計1091人の新型コロナ感染が確認されており、都内では新宿区に次ぎ2番目に感染者数が多い。 保坂氏によると、世田谷区では現在、保健所、病院外来、区医師会運営のPCR検査センターなど3つのルートで検査を実施。現在のPCR検査能力は1日あたり約360件だという。 いわゆる「世田谷モデル」では、1日の検査数を約600件まで拡充し、最終的には2000~3000件を目指すという。 方針を打ち出したのは、東京大学先端科学技術研究センター名誉教授の児玉龍彦氏だ。 保坂氏によると、区で開かれた対策本部会議で、児玉氏からは ・PCR検査体制の拡充(これまでの検査数を一桁増やす体制の整備) ・介護、医療、保育など人と人との接触を避けることが難しいエッセンシャルワーカーに定期的な検査を実施すること ・COCOA(厚労省がリリースした新型コロナ感染者との接触確認アプリ)のインストールを世田谷区職員はじめ区内に広げること などの提案を受けたという。 保坂氏は、「一人一人が行動制限することも重要だが、市中感染が広がっているとなると、PCR検査自体のハードルを低くする、もしくはなくしていく。アメリカのニューヨークでやっているような、『いつでも、どこでも、何度でも』ということを最終的には目指していくべきだ」と話した。
陽性者の隔離・受け入れ先はどうする?
一方で、PCR検査数を増やせば、感染者数も増加することが見込まれる。陽性が判明した感染者の受け入れ先をどうするか、などの課題が残る。 保坂氏は、「家族内感染も多いため、自宅待機はできるだけ避けてほしい」と説明。「一般的な日常生活を送る中で感染を回避しながら同居するのは難しい。東京都と緻密に連携して、再確保したホテルに軽症な方を案内できるように体制を強めたい」とした。 また、医療現場での病床の確保も必要だとして、感染者の治療にあたる医療機関への財政支援も表明した。 「(病院側が)受け入れ体制を作ると赤字になってしまう。この体制を変えなければベッドを確保できない。受け入れの医療機関に最大限の体制をとってもらうために、現場を経営破綻させない、赤字を出させない支援が必要だ」
「プール方式」を採用
財源の確保も課題となる。 PCR検査は自費なら3~4万円かかるが、エッセンシャルワーカーを対象とした「社会的検査」を実施する場合は、「一人あたりの検査費用を下げることは前提となる」と強調。「1日で2000~3000件となると相当な予算が必要となる」といい、協議を進めているという。 会見では、複数人の検体をまとめて検査する「プール方式」を採用することで、コスト低減に繋げるとの考えも示した。 従来の検査では、1人分の検体を1つずつ検査しているが、「プール方式」では複数の検体を混ぜて検査する。陽性反応が出た場合に1人ずつ検査することで、検査効率が高まるという。
生田綾
Source : 国内 – Yahoo!ニュース