【マンションが危ない】 マンション保険料、修繕怠るなど支払い頻度高いと大幅値上げも(ニュースソクラ)

10月から火災保険値上げ、9月末までの解約再加入が有利な面も

 最近、分譲マンションが加入する保険の保険料がどんどん値上がりしている。

 つい先日も、東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険が、水漏れや設備の破損などが多発するマンションの保険料を、2021年に4~5割高くすると報じられた。

 いわゆるマンション保険は、火災保険がベースで、個人がそれぞれの住居向けに入るのではなく、管理組合が加入するものだ。躯体や玄関、エレベーター、階段、配水管といった共用部分の損害を補償する。これまでは、築年数や地域で保険料に差はあったが、保険金の支払い頻度(事故の多さ)では変わらなかった。

 ところが、今後は支払い頻度の高いマンションの保険料は4~5割引き上げ、逆に頻度の少ないマンションに対しては安くするという。

 たとえば、過去2年間に10件の支払いがあったら保険料を25%アップ。15件を超えた場合は50%引き上げる。逆に2件以下なら保険料を20%以上引き下げる。

 全国で数千棟が対象となり、保険料は1住戸当たり、年間4000~6000円の差がつく見通しだ。総戸数500戸の超高層マンションなら年間で200~300万円の差になる。修繕積立金が足りず、管理状況が悪いマンションの保険料は高騰し、入居者の管理費負担が増えるだろう。ますます管理組合の維持管理の「質」が問われることになる。

 保険料値上げの大きな理由の一つは、水漏れ事故の多発だ。いまや総マンション戸数654・7万戸のうち、築後30年以上が197・8万戸。じつに3割を超えている。老朽化した給排水設備から水が漏れる。さらに台風や雪害、地震といった自然災害が追い打ちをかけて破損、汚損が増えている。

 大手損保が加盟する損害保険料率算出機構の「火災保険・地震保険の概況」によれば、「水濡れ事故による支払い」は、2011年が29113件、162億円だった。それが2015年には40152件、211億円と急増している。件数、保険支払額とも3割以上の増加だ。

 しかも、漏水や汚破損事故は、修繕を怠っている一部のマンションに集中する傾向があり、大手損保は保険料の公平さを踏まえて値上げの判断をしたとされる。

 これとは別に今年10月には主要保険会社の火災保険が値上げされる予定だ。東京都内のマンションの場合、2割程度上昇すると予想されている。

 大幅な保険料の値上げで、管理組合の理事たちは戦々恐々となっている。真っ先に目が向けられているのが、当たり前のように入っていた「水漏れ原因調査費用」や「個人賠償責任包括」などの特約(オプション)だ。水漏れ原因調査費用特約に入っていれば、費用を気にせず、水漏れの原因を調べられる。住戸のなかだろうが、エントランスの天井だろうが、どこの水漏れも原因調査ができる。

 そして、共有部分に原因があるとわかれば保険金が支払われる。また専有部分の住戸に原因がある場合でも、個人賠償責任包括特約とセットで入っているケースが多く、こちらも特約で補償される。ある意味、公私の境が曖昧だったのだ。

 しかし、保険料が高騰すれば、特約をつける余裕がなくなってくる。

 東京都内の築後32年、150戸のマンションの管理組合理事長は、「当事者の責任が重くなる」と語る。

 「いままでは、エントランスのガラスが割れていたり、車がポールをこすってゆがんだり、誰かがボールをぶつけてタイルが剥がれたりしていても、まぁまあ、同じマンションの住民だからと一々、個人に補償は求めませんでした。汚破損も保険で処理すればいいでやってきた」

 「だけど、これからはそうはいかない。保険申請する内容が問われます。敷地のなかは防犯ビデオが常時回っていますからね、汚破損の原因を作った人が特定できれば、その人に直してもらうことになりそうです」

 いやはや、「犯人さがし」に拍車がかかりそうだ。

 一級建築士でCIP社長の須藤桂一氏は、保険料値上げに対する「自己防衛策」について、こう述べる。

 「今年10月の火災保険の値上げに対してですが、マンションの場合、5年契約が多いですね。私がコンサルタントをしている管理組合の方々には、保険期間が残っていても、9月末までに解約し、同じ保険に5年契約で入り直すことをお勧めしてます」

 「個別の保険商品で違いはありますが、火災保険の場合、残り期間分に対して払った保険料も返ってきます。保険料が安い間に新規の5年契約に切り替えて少しでもコストを下げ、時間を確保して、修繕計画などを吟味したらいい」

 現行の保険料の間に新規に切り替えるほうが、みすみす値上げされてから加入するより、お得なようだ。

■山岡淳一郎(作家)
1959年愛媛県生まれ。作家。「人と時代」「21世紀の公と私」をテーマに近現代史、政治、経済、医療など旺盛に執筆。時事番組の司会、コメンテーターも務める。著書は、『後藤新平 日本の羅針盤となった男』『田中角栄の資源戦争』(草思社)、『気骨 経営者 土光敏夫の闘い』(平凡社)、『逆境を越えて 宅急便の父 小倉昌男伝』(KADOKAWA)、『原発と権力』『長生きしても報われない社会 在宅医療・介護の真実』(ちくま新書)、『勝海舟 歴史を動かす交渉力』(草思社)、『神になりたかった男 徳田虎雄』(平凡社)『木下サーカス四代記』(東洋経済新報社)

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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