日本が予選4試合を全勝し、史上初のベスト8入りしたラグビーワールドカップ。日本の大躍進で人気に火がつき、「ラグビーの試合をフルで観るのは初めて」という人たちを巻き込んで、日本中が熱狂している。
実は私も、そんな“にわかファン”のひとり。
でも、ワールドカップから興味を持った人からは、「ルールが複雑で分からない」「盛り上がっているけれど…」という声も漏れてくる。
そこで、「にわかファン歓迎」を公言する元U20日本代表監督で、現在日本ラグビーフットボール協会理事の中竹竜二さんに、ラグビーの魅力と初心者が楽しめるポイントを直球質問。10月20日午後7時15分から南アフリカ戦の前に要チェック!
◆質問1「ルールがよく分からないのですが…」
(中竹さんの答え)
分からなくても大丈夫です。今回のワールドカップに限らず、「ラグビーのルールは分かりづらい」「だから近寄りがたい」という声はたくさん聞いてきました。ご安心ください、ハッキリ言って、理解する必要はありません。正直、競技団体関係者でさえもすべてを正確に説明できる人はいないと思います(笑)。時代に応じてラグビーの公式ルールは変化してきた歴史があり、判定基準も日々更新されていくので、追いつくのは大変です。例えばここ最近では、特に「安全性」への配慮に力を入れていて、危険なタックルへの厳罰化が進んでいます。
ということで「ルールが分からないと楽しめないのでは?」という心配も無用です。ラグビーは、ルールが分からなくても十分に楽しめるくらいの魅力を備えています。実際、「まったく知識がない状態で予選リーグを観たけれど面白かった。感動した」という人は多いのではないでしょうか。
◆質問2「ラグビーならではの魅力って何ですか?」
(中竹さんの答え)
3つあります。一つは、「多様性」。これこそが、ラグビーが他の団体スポーツと差別化されているポイントだと思います。
どのような点が多様性なのかというと、勝利をつかむために必要な役割、そのために必要となる資質のバリエーションの豊かさです。
例えば、スクラムをがっちりと組める体重の重い選手、ラインアウト(ボールがコートの外に出た際に、ボールを投げ入れて再開するセットプレー)で優位となる身長の高い選手、パス回しのうまい選手、足の速い選手と、15人の選手それぞれが“自分の得意を発揮できる”競技です。
また、代表選手になる資格についても国籍よりも「その国に根付いてプレーを続けてきた」ことを重視するので、選手の人種も多様です。これはもともとラグビー発祥のイギリスが、自国の植民地での競技に参加しやすい条件を整えた歴史に起因しますが、結果として、今の時代の最先端の組織編成になっています。
二つ目は「競い合い」の奨励。ラグビーのセットプレーを見ていると、ラインアウト では、両チームが向かい合った間(1メートル幅)にボールを投げ入れなければいけなかったりと、“両者イーブン”の条件で再開されます。味方の選手を目がけて投げるサッカーのスローインとは大きく違う点です。つまり、試合を通じて「圧倒的な優位差」は生まれにくい。ボールを奪い合う頻度が高くなり、それが観る人を飽きさせないポイントになっています。
三つ目は「選手のオーナーシップ」。ラグビーは、団体スポーツの中でも最もコーチの介入度が低い競技です。(試合中もベンチには入れず、観客席にいます。) コーチが指示できるのはハーフタイムだけで、前半後半各40分を、選手たちだけでゲームメイクしなければならない。
つまりキャプテンには強い権限が与えられていて、選手の中でも審判と直接話せるのはキャプテンだけ。象徴的な慣習が、「キャプテンズ・ラン」。これは試合前日の最終調整の練習を指すラグビー用語なのですが、その呼び名どおり「コーチが介入せず、キャプテンの指揮に任せる」のを原則にしているんです。
審判もまた同じ。強い立場で介入せずに、選手同士の話し合いを尊重するシーンは、今回の試合中にも何度も見られました。他の競技には見られる、抗議のシーンもほとんどない。とにかく試合前からコミュニケーションを丁寧にとって、人としての信頼関係を築くことが重視されます。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース