東京電力福島第一原発の事故をめぐり、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は17日、国の責任を認めない判決を言い渡した。判決理由の骨子は以下の通り。
公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的等に照らし、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、国家賠償法1条1項の適用上違法となる。そして、国が公務員による規制権限の不行使を理由として国家賠償責任を負うというためには、上記公務員が規制権限を行使していれば被害者が被害を受けることはなかったであろうという関係が認められなければならない。
本件事故以前の我が国における原子炉施設の津波対策は、津波による原子炉施設の敷地の浸水が想定される場合、防潮堤、防波堤等の構造物を設置することにより上記敷地への海水の浸入を防止することを基本とするものであった。したがって、経済産業大臣が、2002年7月に公表された「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(本件長期評価)を前提に、電気事業法(改正前のもの)40条に基づく規制権限を行使して、津波による福島第一原子力発電所(本件発電所)の事故を防ぐための適切な措置を講ずることを東京電力に義務付けていた場合には、本件長期評価に基づいて想定される最大の津波が到来しても本件発電所の1~4号機の主要建屋の敷地(本件敷地)への海水の浸入を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置が講じられた蓋然(がいぜん)性が高い。
そして、08年に東京電力に報告された本件長期評価に基づく津波の試算は、当時考えられる最悪の事態に対応したものとして、合理性を有する試算であったから、経済産業大臣が上記の規制権限を行使していた場合には、上記の試算された津波(本件試算津波)と同じ規模の津波による本件敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置が講じられた蓋然性が高いといえる。
ところが、現実に発生した地…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル