原知恵子
厳冬期の2月、北海道警の山岳遭難救助隊が雪洞で野営訓練を行った。アクセスが困難な雪山の斜面で実施されるため、過去に報道陣が取材した事例はほとんどない。このほど、道警の協力で記者が同行した。
野営場所は十勝岳連峰・三段山の標高1300メートル付近。隊員たちは今回は、雪崩の恐れがなく、十分な積雪がある斜面を見極め、2~3人の班に分かれて横穴掘りを開始。1時間半ほどで4基を完成させた。
雪洞は、テントに比べて防風性が高く気温が下がりにくいといったメリットがあり、雪山遭難の現場では作成技術は必須。緊急的に滞在したり、遭難者を休ませたりする場合がある。ただ、コロナ禍は「三密」や感染拡大リスクの観点から雪洞野営訓練ができず、4年ぶりの実施だった。
初挑戦だった新人隊員の松本将弥さん(旭川東署)は「始めは比較的雪が軟らかくて掘りやすかったんですが、奥に行くにつれて雪がしまって固くなり、体力を消耗しました」。
先輩隊員から快適性を高めたり、酸欠防止につなげたりする知識や技術を教わり、意識が高まったという。「たくさんの課題に気づけました。今回は背中を見てついていくばかりでしたが、いつかは率いることができるような隊員になりたいです」(松本さん)
前後には雪崩埋没者の捜索や搬送の訓練などもあり、連係の強化や技能のアップデートもはかられた。
道警によると、コロナ禍の制限が解除された今年度は、山岳遭難の件数が過去最多ペースで推移し、死者も出ている。冬山シーズンは特に、雪崩やバックカントリーの道迷い事案が目立つという。
訓練隊の責任者で道警本部の菅原佑介警部補は「雪山は非常に危険です。立ち入る場合は計画、準備、トレーニング、天候の確認を怠らないでください。登山計画書の提出や家族・知人への行動スケジュール共有、時には勇気ある撤退判断をお願いします」と話している。(原知恵子)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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