古賀茂明氏を覚えているだろうか。2011年に「日本中枢の崩壊」という官僚機構を批判した著書がベストセラーになり、一躍メディアの寵児(ちょうじ)となった元経産官僚だ。実は、古賀氏は、私がシンクタンクで働いていた時のクライアントだった。当時から10年に1人の逸材と呼ばれていて、厳しい仕事の発注をしてきたのだが、私は古賀氏が好きだった。できないことを言わないからだ。頭の悪い官僚は、実現不可能な要求をしてくるのだが、古賀氏は不可能一歩手前をいつも指示してきたのだ。そんな縁で、先日古賀氏と食事をする機会があったのだが、驚くことに、昨年秋に朝日放送のレギュラーが終了して、いま古賀氏にはテレビ・ラジオのレギュラーが一本もなくなってしまったのだそうだ。
古賀氏の主張は、とっぴなものではない。平和主義と利権や癒着や腐敗の根絶で、国民の多くが共感することばかりだ。それなのに古賀氏がなぜ干されてしまったのか。私は、政府の痛いところを突いてしまったからだと考えている。例えば、原発はもう要らないとか、官僚が利権をむさぼっているとか、安倍政権は独裁だといった話は、政府の逆鱗(げきりん)に触れてしまうのだ。
いまテレビのコメンテーターで活躍している人は、とても上手な人が多い。一見、政府批判をしているように見せて、急所を外しているのだ。だから、古賀氏がテレビに本格復帰するのは難しいのかもしれない。ただ、唯一の救いは、週刊誌2誌が古賀氏の連載を続けていることだ。いまや完全な言論の自由は、文字メディアにしかないのかもしれない。その意味で、今回、本紙で新しく連載をさせてもらう機会を得たことは、とてもうれしい。自由に「急所」を書いていこうと思う。連載が何回続くのか、とても楽しみだ。(経済アナリスト)
報知新聞社
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