日本は中東に自衛隊を派遣するのか
7月19日、イランの革命防衛隊がイギリスのタンカーを拿捕した。イラン側の説明よると、タンカーがイランの漁船と衝突したにもかかわらず停戦しなかったことが原因だという。そして、イラン南部のバンダルアバス港に方向転換を命じられ、停泊させられた。
この説明は俄には信用できないが、これは、7月4日に英領ジブラルタル当局がイラン産原油を積載してシリアに向かっていたタンカーを拿捕したことへの対抗措置だとみられている。イランは対米関係のみならず、イギリスとの関係も悪化させており、ホルムズ海峡の緊張が高まっている。
同じ19日、アメリカは対イラン有志連合の結成に向けて、60カ国以上を招いた説明会をワシントンで行っている。さらに先週には米国防長官が来日し、改めて有志連合への参加を求めたようである。
イラン情勢が今のように緊迫した原因は、2018年5月8日のトランプ大統領によるイラン核合意からの離脱にあることは明白である。これは、アメリカ外交史上、最大の失敗の一つである。
アメリカによる厳しい経済制裁で悲鳴を上げたイランは欧州に支援を要請するが、期待したような措置は十分にとられず、1年が経過した段階で、核開発の段階的再開という対抗手段に出たのである。
実は、イランが対抗手段にでたことが世界平和への「今そこにある危機(clear and present danger)」なのではない。イランが合意に反して核兵器の開発を進めていたならば、核合意を批判することは理解できる。しかし、IAEA(国際原子力機関)が厳格な査察を定期的に行った結果、イランは合意を遵守していることは証明されていたのである。
トランプ政権は、「核開発の完全な放棄ではなく、一時的中断なので、イランがいつ再開するかわからない」と主張し、核開発能力の100%除去を要求しているのである。
この背景には、イスラム革命後のアメリカ大使館占拠事件(1979年11月)以来の対イラン不信感がある。
しかし、英米仏独中露とイランとの間で10年にわたる協議の結果、2015年7月にまとまった核合意は双方の主張を妥協させた外交的成果であることは間違いない。安保理常任理事国とドイツにとっては、イランに核の冒険を中止させることに成功したのであり、イランにとっては、核開発能力は残したまま、それを自制することで経済制裁解除という見返りを得たからである。
そして、イランが経済復興するとの見通しで、日本からも多くの企業が進出し、イラン経済も活性化し、それは世界経済にもプラスになると考えられていた。
ところが、トランプ政権が誕生すると、事態は一変する。先述したように、核合意からの離脱を一方的に決めたのである。しかも、それは、パリ協定やTPPからの離脱と同様に、単にオバマ政権の政策だったからというだけの理由である。
トランプ大統領を「無能」と表した公電が漏洩して辞任したダロック駐米英大使は、漏洩公電の第二弾に、「(トランプ大統領による)イラン核合意からの離脱はオバマ前大統領が手がけたから」だと明言している。政策の中身など興味がないのである。
トランプは、お気に入りのイスラエルが核武装していることについては一切批判しない。それは、イランにとっては受け入れがたいことである。また、北朝鮮が密かに核開発を継続しているにもかかわらず、金正恩と握手し、平気で会談するトランプの神経は理解しがたいであろう。
このような二重基準がトランプ外交の問題点である。核合意からの離脱というトランプ政権の政策には、中露のみならず、英仏独も批判的であり、アメリカの制裁によるイランの経済的窮状を救うために金融など様々な手を講じてきた。しかし、アメリカの制裁措置に従わないと、ヨーロッパの企業もアメリカの攻撃対象となる。そのマイナスを考慮に入れると、欧州諸国の対応にも限界があった。
今のところ、イランはゆっくりとした速度でエスカレーションの階段をのぼっており、アメリカが過剰反応さえしなければ、直ちに武力衝突が起こるような状態ではない。しかし、階段を降りていく道筋が全く見えないのが問題なのである。
19日、米軍は16年ぶりにサウジアラビアに駐留することを決定した。スンニ派のサウジとシーア派のイランの対立も先鋭になってきている。長い支配経験のある英米でも対応が難しい地域に日本が介入するのは至難の業である。しかし、ボルトン米大統領補佐官も来日し、有志連合への対応を迫られることになる。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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