静岡県熱海市の伊豆山地区に大きな被害をもたらした土石流から一夜が明けました。複数の安否不明者がいるとみられる中、救助に向けた活動が続いています。一日の動きをタイムラインで詳報します。
14:30
母と連絡とれず安置所へ
熱海市下多賀の南熱海マリンホールには、遺体の安置所が設けられた。
訪れた静岡市の自営業男性(40)は伊豆山地区で一人暮らしをする母(69)と連絡がとれないという。
「土石流のニュースを見て母に電話をかけたがつながらず、LINEも『既読』がつかない。避難所をいくつか回ったが見つからなかった。最後に得られる情報はここだけなので来てみた。少しでもなにか分かることがあれば知りたい」とやつれた表情で話した。
案内されて遺体を確認したが、母はいなかったという。
14:15
26時間ぶりに高齢夫婦救助
熱海市伊豆山の湯原珍江(よしえ)さん(75)が夫栄司さん(75)とともに、自宅から救出された。
珍江さんは前日の午前10時半ごろ、自宅3階で重機が通過しているような轟音(ごうおん)を聞いた。「大雨が降っているから、どこかへ出動しているのかしら?」。窓から外をのぞくと、自宅前に土石流が流れ込んできた。
約30分後、さらに大きな土砂の波が自宅を襲った。外にいた栄司さんに「土石流が来てるわよ!」と叫んだ。栄司さんは外階段を駆け上がり、間一髪で土砂をかわした。
「第2波」で地下1階、地上3階建ての1階部分は2メートルほどの土砂で完全に埋もれた。窓から外に出るのも危険が伴う。救助が来るまで待つことにした。ガスと水道は止まっていたが、3階は電気がついた。備蓄用のペットボトルの水やカップ麺などで26時間超をしのいだ。
「無事でいられてほっとした」と話した珍江さん。「伊豆山に住んで75年。こんな土石流が起きたのは初めて。信じられない」
栄司さんは「いつまた土砂が来てもおかしくないという恐怖がずっとあった。やっと安全な場所に戻ってこられた。本当にホッとしました」と語った。
13:50
午前10時までに新たに9人救助
熱海市の斉藤栄市長は報道陣の取材に応じ、4日は午前10時までに新たに9人を救助したと明らかにした。4世帯以上の建物からそれぞれ救助され、うち高齢女性1人が重症。8人はけががないという。
市によると、市消防が午前9時過ぎに重症者を救助した。病院に搬送され、治療を受けている。ほかの8人も午前9時半ごろまでに助け出された。8人は高齢男性4人と高齢女性2人、成人女性2人という。
その後は雨がやや強まり、現場で小規模な崩落が起きたこともあり、救助活動は中断された。斉藤市長は「断続的な雨のため、捜索が思うにまかせないところもある」と話した。
11:20
熱海市「捜索を再開」
熱海市の広報担当者は、雨が強まった影響で一時停止していた伊豆山地区での警察や消防、自衛隊による安否不明者の捜索が午前10時18分に再開されたことを明らかにした。
11:05
首相「19人救助、建物被害130棟か」
首相官邸で大雨に関する関係閣僚会議を開き、対応を協議した。3日に静岡県熱海市伊豆山で起きた大規模な土石流について、菅義偉首相はこれまで19人を救助する一方、死者と負傷者はそれぞれ2人を確認し、建物被害は130棟に及ぶ可能性に言及。「安否不明の方も複数いる」と述べ、二次災害に注意したうえで救助活動や被災者支援にあたるよう閣僚らに指示した。
また首相は、梅雨前線が引き続き日本列島に停滞し、各地で大雨を降らせる可能性を指摘。「危険な場所に近づくことがないよう、気象情報や避難情報などに十分注意し、早め早めに命を守る行動をとっていただきたい」と国民に呼びかけた。
10:50
「小さな崩壊の可能性」 副知事指摘
難波喬司・静岡副知事は熱海市役所で、土石流が発生した起点付近の4日朝の状況について、今後さらに大規模な崩壊につながるようなクラック(亀裂)は入っていないことを明らかにした。ただ、「小さな崩壊が起きるクラックは入っている」と述べ、小規模な崩壊の可能性を指摘した。
副知事は報道陣の取材に対し、小規模な崩壊について「50立方メートルか100立方メートルくらい」と説明。今後の雨が大規模な崩落に結びつく可能性については「1時間に20ミリか30ミリの雨」であれば、大規模な崩落に結びつく可能性は小さい、との見方を示した。
10:45
なじみ客の姿なく「心配しています」
熱海市網代で雑貨店を営む内田雅也さん(33)のもとに、近所の人が数人集まっていた。伊豆山地区で魚屋を営む親子のことを心配そうに話し合っていた。内田さんは「息子さんはいつも朝になると、店にたばこを買いに来てくれていたが、今日はまだ来ていない」と語った。
近所の住民たちの話では土砂災害発生前に、網代の得意先で魚を売った後に伊豆山地区の店に向かった息子の姿を見たのが最後だという。「親子ともに姿が見えず、心配しています」
10:00
住民「いったいいつ、元の状態に」
熱海市伊豆山の浜地区に住む池谷辰代さん(80)は、警視庁の職員が安否不明者の捜索のために道の泥をかき分けていく様子を、自宅近くで見守った。「土砂が減って少しほっとした」と、目を潤ませながら話した。
自宅は土石流による被害は免れた。当初は「なにがなんだかわからなかった」が、親戚や友人から「無事なのか」と電話をもらったり、なじみのそば屋やクリーニング店が泥にまみれているのを見たりするうちに、被災したという実感がわいた。自宅で過ごした深夜、涙があふれてきた。
「慣れ親しんだ街がめちゃくちゃになってしまったことが、何より悲しい。いったいいつ、元の状態に戻るんでしょうね」
09:50
現場に警報音、捜索停止
安否不明者の捜索が続く土石流の現場では、雨が降り続いている。午前9時50分ごろ、伊豆山地区に土砂災害の危険を知らせる「エリアメール」が熱海市から流れ、近くにいる人たちの携帯電話が一斉に鳴った。「伊豆山地区では、これまでの雨により土砂災害の危険性が高まっています。土砂災害に十分注意してください」という内容だった。
捜索現場でも同じ頃、土砂災害の危険を知らせる警報が鳴り響き、「緊急退避」という号令と笛の音を受けて、消防隊員らが全力疾走で現場を離れた。
静岡県によると、雨が強まった影響で、午前9時50分現在、捜索の一切を一時停止した。
09:30
被災のクリーニング店夫婦「とにかく無事でいて」
静岡県熱海市伊豆山浜でクリーニング店を営む、岡本政夫さん(69)と、妻・尚子さん(68)は4日午前9時半ごろ、警視庁による行方不明者の捜索を、不安そうに店の前で見守った。
3日の土石流で、1階の店内には泥が入り込み、物が散乱したり壁が壊れたりし、足を踏み入れられない状態になった。身動きがとれなくなり、3階の自宅で一夜を過ごした。
政夫さんは「まずはとにかく普通に歩ける町に戻ってほしい」。上流側で、20年来の友人の安否がわからなくなっている尚子さんは「全体でどれほどの被害があるのか、早く知りたい。友人にはとにかく無事でいてほしい」と話した。
09:20
町内会長「土砂が空を舞っていた」
熱海市伊豆山の浜地区の逢初橋近くには、流れ込んだ土砂が150センチほどの高さまでたまっていた。警視庁が朝から重機を使って行方不明者の捜索などを行い、近くの避難所に逃げた住民らは、不安げな様子で見守っていた。
同地区町内会長の千葉誠一さん(74)の自宅そばにも、泥が流れこんだ。3日、避難のため車を準備していたところ、「どかん」と破裂音のようなものが聞こえた。後ろを見ると「土砂が空を舞っていた」。直後、大木や岩をのみ込んだ濁流が目の前まで迫り、無我夢中で走って逃げた。数秒後に振り返ると、土砂が国道を寸断していた。「一瞬でも遅かったら命がなかったかも……」
警視庁の捜索活動中には、土砂災害の危険性を知らせるアラームが鳴り、捜索活動が一時中断する緊張感が続く。千葉さんの友人には、国道を寸断した土砂の先に避難している人もいる。「みんな無事だといいけど……」と声を振り絞った。
09:00
ビル3階の男性を救助中
警視庁は熱海市伊豆山の下流付近で4日午前9時前に捜索を開始。逢初橋近くの5階建てビルの3階に取り残された男性一人の救助に当たっている。
警視庁の警察官は「大丈夫ですか」「いま救助しますから待っていてください」と大声で男性に呼びかけ、男性はベランダから身を乗り出して応じていた。
ビルは高さ約150センチの泥で囲われ、複数の重機で泥をかき出している。
逢初橋がかかる国道135号付近は、土石流で流されたバスや車などが泥に埋まったままの状態だ。
08:50
気象庁「厳重な警戒が必要」
東海と関東に記録的な大雨をもたらした梅雨前線は4日、日本海まで北上し、北陸や中国、九州北部で大雨となるところがある見通しとなっている。気象庁によると、5日にかけて日本海側では局地的に1時間50ミリ以上の非常に激しい雨が降る恐れも。これまでの大雨で土砂災害の危険度が高まっている東海を含め、厳重な警戒が必要という。
静岡県熱海市の観測点では、3日午前の土石流発生後も断続的に雨が続いている。熱海市を含む伊豆地方では、5日にかけて多いところで1時間雨量30~40ミリの激しい雨も予想されている。
関東でも降雨は続くとみられ、これまでの大雨で地盤が緩んでいるところがあり、気象庁は4日夕にかけて土砂災害に警戒を呼びかけている。
07:50
伊豆山地区、なお20人が行方不明
静岡県熱海市の土石流被害で、斉藤栄市長は4日朝の災害対策本部の会議後、伊豆山地区で被害にあった建物が約80棟と推計されると明らかにした。亡くなった人は女性2人で、なお約20人が行方不明だという。行方不明者とは別に、3日夜に救助された人は男性6人、女性4人の計10人いたという。
警察や消防、自衛隊の約700人が伊豆山地区で救助活動を続けている。4日午前6時現在、市内の約10カ所に約390人が避難している。
07:30
土石流現場、様子見に来る住民も
4日午前7時半、土石流のあった静岡県熱海市伊豆山の岸谷地区では、規制線が張られ、警察官や自衛隊員らが慌ただしく行き交っていた。
雲が低く垂れ込め、雨が本降りになるなか、規制線のところまで様子を見に訪れた住民もいた。
規制線の中に自宅がある田中公一さん(71)は、妻路子(みちこ)さん(70)と連絡が取れていない。「妻が埋まっているかもしれない。昨日から不安で落ち着かない。昨日も今朝も妻と連絡が取れない。無事だといいが……」と、自宅の方を心配そうに見つめていた。
07:00
「72時間が大事」熱海市長が呼びかけ
静岡県熱海市役所では4日午前7時、県や市、消防や警察などの関係者が集まり、災害対策本部が始まった。斉藤栄市長は会議の冒頭で、「二次災害を防がねばならないが、昨日からの72時間が人命救助の一番大事な時間になる。情報収集、避難所の対応など救助活動のバックアップのためにも持ち場の仕事に全力を挙げてほしい」と呼びかけた。
06:00
捜索・救助作業始まる
土石流発生から一夜明けた静岡県熱海市の現場では、4日午前6時、自衛隊、消防、警察による本格的な行方不明者の捜索と、救助作業が始まった。
05:30
JR東海によると、大雨の影響で運転を見合わせていた東海道新幹線の東京―新大阪間について、4日の始発から通常通り運転を再開する。
東海道新幹線は3日、小田原―熱海間で線路構造物を確認するため、東京―新大阪の全線で運転を見合わせていた。点検の結果、運行に支障がないと判断した。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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