2日夜から3日朝にかけて、東海から関東の太平洋側で記録的な大雨となり、静岡県熱海市では3日午前、大規模な土石流が発生しました。県や市によると複数の家屋が流され、人的被害も出ています。タイムラインで詳報します。
22:00
2人の死亡確認、4人を救助
心肺停止の状態で見つかっていた女性2人について、死亡を確認したと熱海市が発表した。また4人を救助し、うち1人は軽傷という。
21:10
傾いた大家宅 電話かけたが
伊豆山地区の鈴木アキさん(74)は、市内の避難所に身を寄せていた。
自宅にいた午前10時半ごろ、近くで「ドーン、ガラガラガラ」という音を聞いた。消防車のサイレンも聞こえた。外を見ると道路に土砂が積もり、水浸しになっていた。外に出ると、自宅アパートの大家宅が半分傾いているのが見えた。大家に電話をかけたが、つながらなかったという。
その後に近くの友人宅に一時身を寄せ、避難所に移った。「今までこんなことがなかった。初めてで驚いている」
21:00
叫んだ友人「早く逃げて」
伊豆山地区の山口シズエさん(82)は、市内の避難所に身を寄せていた。
この日午前、冷蔵庫を開けると、停電のため中が真っ暗で「おかしいな」と気づいた。ちょうどその時、友人がドアをたたき、「ここにいちゃいけない。早く逃げて」と叫んだ。
鍵だけを持ち、友人と外に出ると、通りには避難する人のための車が数台待っていた。知らない人だったが、避難所まで乗せてくれたという。避難中、土石流が流れていくのが見えた。
やがて避難所に着き、「やっとほっとした」。携帯電話も持ってこなかったため、友人たちの安否も分からない。静岡県三島市で暮らす息子の妻からは自宅に来るよう勧められたが、避難所には友人がいるため残ることにしたという。
20:40
落ちた小石 その10分後に土石流
熱海市に隣接する神奈川県湯河原町の富山武美さん(76)は、土石流にのみ込まれた道路を発生の約10分前に通っていた。
家族3人で車に乗り、熱海駅近くの病院に向かう途中だった。道路沿いに小石がたくさん落ちていることに気づき心配していたが、後にテレビのニュースを見て現場を通っていたことに気づいた。「あと10分遅かったらだめだった。生きた気がしない」
自宅への道が通行止めになったため、熱海市の総合福祉センターの避難所に身を寄せた。
20:20
住民「伊豆山は頑丈、安全だと」
伊豆山地区の自宅にいた上野勝子さん(76)は、停電が数回起きたことで異変に気づいた。窓の外を見ると目の前の道路を土砂が流れ、電柱3本が折れていた。
「大変なことになった」。腰が悪く、自力では逃げられない。救助に駆けつけた消防の誘導で、午前11時ごろに避難所となっている熱海市総合福祉センターに逃げた。
生まれてからずっと伊豆山地区に住んでいる。「伊豆山は頑丈な山」と近所の人たちと話をしていたという。「安全だと思っていた場所でこんなことが起きたので、どこでも災害は起きるんだと思い怖くなった」
20:00
100歳の母を背負い避難
伊豆山地区の男性(75)は、同居する100歳の母親を背負い、夕方に自宅から熱海中学校に避難した。
午前10時ごろ、「キャー」という女性の悲鳴で異変に気づいた。すぐに自宅の外に出ると、目の前をすさまじい勢いで流れる土石流が、近所の家をのみ込んでいった。「一瞬のことだった。あの状態じゃあ逃げられないと思う」
男性の家は高台にあったため被害を免れたが、消防の呼びかけで避難を決めた。避難所の職員から毛布を受け取り、体育館の床で母親と2人で雑魚寝して一夜を明かす。避難所には50人ほどが集まっていて、男性は「母親は高齢。新型コロナにかからないかが不安だ」とこぼした。
20:00
東京消防庁は、静岡県知事の要請を受けて消防隊員ら121人(35隊)を緊急消防援助隊として熱海市に派遣したと発表した。
大規模災害への対応を専門とする即応対処部隊や人命救助にあたるハイパーレスキュー隊などが被災地で活動する。
19:50
バックミラー越し 迫る泥水
現場近くに住む小松由佳さん(47)は午前11時ごろ、自宅で「ボコボコ」という音と地鳴りのような音を聞いた。窓の外をのぞくと、数十メートル先のアパートが土石流にのみ込まれるのが見えた。
「逃げなきゃ」。同居の母と車に乗り込み、エンジンをかけた。バックミラー越しに、木や岩が混じった泥水が迫るのが見えた。アクセルを踏み込み、夢中になって車を走らせた。
避難所の熱海中学校に身を寄せたが、2階建ての自宅がどうなったかは確認できていない。「家がどうなったか不安。とにかく情報がほしい」
19:30
着の身着のまま避難「まさかこんなことに」
「近所の家があっと言う間にのみ込まれてしまった」。熱海中学校に避難した70代女性は、そう振り返った。
異変を感じたのは午前11時ごろ。「ゴー」という地鳴りのような音がし、「キャー」という叫び声も聞こえた。外に出てみると、約150メートル先の民家が真っ黒な泥水で押し流されていくのが見えた。流された民家が他の民家とぶつかり、「バキバキ」という音もした。着のみ着のままで避難した。
「まさかこんなことになるとは。明日以降、家に戻るのが怖い」と不安げに話した。
18:20
広域緊急援助隊200人を派遣予定
警察庁は大雨で大規模な土砂災害が起きた静岡県に、災害対応に当たる広域緊急援助隊計約200人を派遣すると発表した。行方不明者の捜索や救助活動などに当たる。
警察庁によると午後5時現在、災害対応指揮支援チーム4人を静岡県警熱海署に派遣。広域緊急援助隊として派遣されるのは、警視庁から約140人、新潟県警から約30人、三重県警から約30人の予定という。
18:20
住民「10分おきくらいに土石流が…」
この地区に住む男性(70)は、「10時過ぎぐらいに消防の放送で何があったのかと外に出たら、土石流が来ていた」と話す。男性によると、10分おきぐらいに土石流が立て続けに起こり、計5回ほど土砂が流れてきたという。
江戸時代ごろから先祖代々同じ土地に住んでいるというが、災害については親から聞いたことはなかったと振り返る。「テレビなどで災害時に『こんなことは経験したことがない』と話す人を見てきたが、まさか自分がそうなるとは」と話した。
18:00
首相「自らの命守る行動を」
菅義偉首相は3日、大雨に関する関係閣僚会議後、首相官邸で記者団の取材に応じ、「静岡県の熱海市伊豆山付近における土石流により、複数の方や多数の家屋が巻き込まれるなどの大きな被害が発生している。被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます」と述べた。
そのうえで首相は、「人命第一のもとに警察、消防、海上保安庁、自衛隊が懸命に救命救助活動を行っているが、気象条件のためにヘリやドローンが飛ばせない状況だ」と説明。「長時間の雨によって地盤が緩んでいるので、気象状況に十分注意して、自らの命を守る行動をとって頂きたい」と呼びかけた。
静岡県によると、熱海市土石流で、複数の家屋が流されたほか、2人が心肺停止、約20人が安否不明という。
18:00
警視庁の機動隊員ら170人が熱海へ
警視庁の機動隊員ら約170人が、災害援助のために熱海市に向けて出発した。広域緊急援助隊のほか、レスキューを担う特殊救助隊、警備犬などが被災地での活動にあたる。
17:45
自衛隊が捜索を開始
防衛省によると、土石流が起きた現場に到着した陸上自衛隊第34普通科連隊の隊員30人が、行方不明者の捜索活動を始めた。その後、作業は約1時間後に一時中断したという。
同省はこのほか、駒門駐屯地(静岡県御殿場市)に駐屯する第1戦車大隊などの隊員約90人を現地に追加で派遣しており、順次現場に到着する見通し。
17:30
避難所の様子は
避難所になっている市立熱海中学校には午後2時半ごろから地域の住民が集まりだし、約40人が体育館で過ごしていた。市職員やボランティアが、備蓄していたアルファ米や毛布を配った。
周辺が激しい土石流に襲われた般若院の裏手に住む小沢幸雄さん(79)は、「家の近くにパトカーが止まっているのが見え、何があったのかなとベランダに出たら、『ドーン』と大きい音がした。100メートル先くらいの県道に土砂が流れこむのが見えた」。一緒に避難した妻共子さん(73)は、台所から「外で電線が揺れるのが見えた」。自宅は無事だったというが、「どういう状況なのかがわからない。近所の人がどうしているのか心配」と不安そうに話した。
ボランティアの中学2年生、大森匠真さん(14)は「同級生の友人の家が流されたと聞いて、少しでも役に立とうと思った」。避難所の状況について「密を避けてプライバシーにも配慮できるように、パーティションが欲しい」と求めた。
17:30
近くの住民「いつ家に戻れるのか」
土砂崩れが起きた現場の近くに住む千葉沙央里さんは、両親とともに避難所に避難した。午前9時前に自宅を出て熱海市内の飲食店で働いていたところ、知人から電話を受け、土砂崩れが起きたことを知った。両親が避難している避難所に勤務先から向かった。
遠くから見て、自宅の無事は確認できたが、規制線が張られていて近づけない。近所の知り合い5~6人と連絡がついていないという。「初めての経験なのでどうすればいいか分からない。いつ家に戻れるか分からないのですごく不安」と話した。
17:15
「バーンバチバチ」という音
熱海市の土石流現場付近では、道路標識が傾き、電線が至るところで切れて垂れ下がっていた。ある民家では、土砂が玄関前まで流れ着き、家のフェンスがなぎ倒されていた。
近くに住む男性(73)は、「最初に停電があって、そのあとに『バーンバチバチ』という音がして驚いた」。下流域には連絡がつかない知り合いがいるといい、「不安です」とつぶやいた。
17:05
土石流被害は「100世帯から300世帯」
静岡県熱海市の斉藤栄市長は3日午後5時過ぎに記者会見し、市内で起きた大規模な土石流の被害に遭ったのが「100世帯から300世帯」とみられると述べた。市内ではこれまで2人が心肺停止状態で見つかり、約20人の安否確認がとれていない。
約20人という数は、これまでの消防などへの住民からの問い合わせをもとにしている。消防や自衛隊の救出活動がまだ進んでおらず、同市幹部は、さらに人的被害が増える恐れがあると取材に明らかにした。
市は、2日午前10時に「高齢者等避難(レベル3)」を発令。市は土石流の被害が起きた後の3日午前11時5分に「緊急安全確保(レベル5)」を発令した。
この判断について、斉藤市長は「2日の段階で雨のピークを越えたとみていた。雨量などから最終的に私が判断した」などと語った。(南島信也)
17:00
「妻に無事でいてほしいけど…」
熱海市の田中公一さん(71)は、規制線が張られ通行止めになった高台から、往来する警察車両や200メートルほど離れた自宅を見つめていた。「この場所で生まれて以来70年、こんな被害は見たことがない。入るなと言われて何もできない。無事でいてほしい」と言葉を詰まらせた。
午前11時ごろ、上流側に住む知人の安否を確認しようと15分ほど家を空けた間に、自宅が土砂崩れの被害に遭った。帰ると周辺の道路は土砂で埋まり、目で見ただけでも10軒が跡形もなくなっていた。
自宅そばに設置された鉄パイプを伝って自宅に近づき、傾いた自宅の引き戸をはがすと、中は柱が折れたり家具が倒れたりしてめちゃくちゃだった。
妻路子さん(70)の名前を何度も呼んだが応答がない。自宅に置いてきた携帯電話をなんとか取り戻して確認すると、路子さんから何度も着信履歴があった。その後発信を繰り返したがつながらなかった。別の知人のもとには「挟まれているから助けて」と路子さんから連絡があったと聞いた。
17:00
轟音流れる住宅街 あたりは停電か
土石流が起きた熱海市の逢初川周辺で、警察の立ち入り禁止規制が解かれた。
急な斜面に民家が立ち並ぶ閑静な住宅街では、民家の前を通る排水溝を流れる水が「ガーガー」とけたたましい音を立てていた。付近の電柱は電線が切れ、垂れ下がっていた。付近は停電しているようで薄暗く、霧が深くかかり遠くまで見通すことができなかった。
2階建ての白い建物は茶色く染まり、1階の上流側にあるドアが土砂によって破壊され、下流側も土砂に破られていた。
17:00
首相「何よりも人命第一」
静岡県熱海市伊豆山で大規模な土石流が発生したことなどを受け、政府は3日夕、首相官邸で大雨に関する関係閣僚の会議を開き、対応を協議した。菅義偉首相は、被害状況の把握に全力を挙げるよう指示した。
会議で首相は「何よりも人命第一のもとに、自治体と連携し、被害状況の把握や応急対策に全力を挙げるようにお願いする」と発言。そのうえで「今後も大雨が降る可能性があるため、引き続き最大限の警戒を続ける必要がある。二次災害にも注意をし、機動的かつ万全の対応を進めるとともに、避難者らに対する支援を迅速に行って頂きたい」と述べた。
静岡県によると、熱海市の土石流では複数の家屋が流されたほか、2人が心肺停止、約20人が安否不明となっているという。
16:45
静岡県の川勝平太知事は臨時の記者会見で、約20人が行方不明となっているほか、2人が海で心肺停止で海上保安庁に発見されたことを明らかにした。2人は土石流で海に流されたとみられる。
知事によると、3日午前10時半過ぎから伊豆山を源流とする逢初(あいぞめ)川で断続的に土石流が発生。同日正午ごろ、「1人が生き埋めになっている」と斉藤栄・熱海市長から連絡があったという。
土砂崩れの原因について、知事は「大雨で地盤が緩んで上流で土石流が発生し、下流に従って勢いを増して、国道135号を突っ切った。大雨が原因だったということは間違いないが、さまざまな要因が重なって起こった」と話した。
そのうえで「同様の地形がたくさんある。同じようなことが起きても不思議ではない」と述べ、県民に引き続き注意するように求めた。
15:30
静岡県の大井川鉄道によると、午後3時半現在、神尾―福用間の線路に土砂が流れ込んだ影響で、大井川本線の運転を見合わせている。現在、撤去作業を進めている。
15:30
鉄道関連、人的被害なし
国土交通省によると、JR東海の東海道新幹線や東海道線など鉄道関連で、大雨による人的被害は確認されていない。
豪雨のためJR東海やJR東日本の路線の一部で運転を見合わせているが、駅舎など鉄道施設に関する大きな被害の報告は入っていないという。
15:00
自衛隊、熱海の現場近くに到着
防衛省によると、静岡県知事からの災害派遣要請に基づいて熱海市に派遣した、陸上自衛隊板妻駐屯地(同県御殿場市)に駐屯する第34普通科連隊の隊員約30人が、土石流が起きた同市の現場近くに到着した。地元の消防隊から状況を聞き取っており、捜索活動の割り振りを調整している。
13:10
警察庁が災害警備本部
大雨被害を受け、警察庁は警備局長をトップとする災害警備本部を立ち上げた。熱海市の土砂災害など、被害状況の情報収集などに当たっている。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル