東京都内の自治体で、新年度の一般会計予算案の発表が始まりました。各自治体の主な政策や少子化対策など関心の高い話題をタイムラインで詳報します。
■■■2月2日■■■
品川区
小中学校の給食、無償に
品川区は2日、新年度から全区立学校46校の給食費を無償化すると発表した。0~2歳の第2子の保育料と高校生世代の医療費も無償化し、「子育て三つの無償化」と銘打って、新年度当初予算案に計約21億円を計上した。
給食費無償化の対象は区立の全小中学校と小中一貫校。0~2歳の第2子の保育料の無償化は、都が10月に始める方針を示しているが、区は独自で4月に始める。高校生世代の医療費無償化は、都が設けている所得制限を無くし、自己負担分も区が持つことで実現する。
また0歳児を育てる世帯を対象に、おむつなどの育児用品を毎月届けるのに合わせ、助産師や保健師が育児相談に応じる事業を始める。これら子育てに関する新規事業に計約32億7千万円を計上。森沢恭子区長は「子育て、教育で選ばれる品川区にする」と述べた。
一方、昨年12月の区長選で公約に掲げた羽田空港新飛行ルートをめぐる区民アンケートについては、15歳以上の区民を対象に、ほかの区政課題を含めた10問程度のアンケートを実施する方針。森沢区長は「羽田について何問か入れる」としたうえで、「しっかりとした設問を用意し、区民の意向を分析していきたい」と話した。
一般会計予算案の総額は前年度比5・1%増の1987億9400万円で、過去最大規模。(細沢礼輝)
江東区
子どもに所得制限なしで3万円クーポン
東京都江東区は2日、区内に住む18歳以下の子を対象に、1人あたり3万円分の電子クーポンを配布する子育て支援策を発表した。所得制限は設けない。区独自の取り組みとして、新年度当初予算案に必要経費の31億1654万円を計上した。
区によると、区内に住民票を置く18歳以下は約8万2500人。区側が各世帯にQRコード付きの書類を郵送、それを元に電子クーポンなどを受け取ると、子育てに必要な物品などに使える。7月以降の配布を目指すという。
担当課は「子育て世帯には子どもの年齢に応じて特有の負担が生じている。子育て世帯を等しく支援することで子育てしやすい環境を作りたい」と説明。2日の発表会見で、山崎孝明区長は「スピード感を第一に申請手続きを不要にした。家計負担の更なる軽減を図りたい」と話した。
■■■1月31日■■■
足立区
中学校の給食費、完全無償化へ
足立区の近藤弥生区長は1月31日、2023年度から区立中学校の給食費を完全無償化する方針を明らかにした。区は年間約5億3千万円が必要と試算し、23年度当初予算案に関連経費を計上する。
区によると、区立小学校に約3万300人、区立中学校に約1万3800人の児童生徒が在籍。近藤区長は、中学校では制服や部活動など様々な経費がかかるとして、「まずは中学生を育てる家庭を支援する」と説明。小学校については「無償化を目指す」としたが、年間約10億円かかるとして、「財政負担が大きく制度設計が必要。できるだけ早い時期の実施に向け、検討したい」と話した。
高校生については、学校外活動を支援する「高校生応援支援金」を、1人あたり年間5万円を支給する。低所得層の家庭の高校生を区独自で支援するもので、区によると都内の自治体でも例がないとみられる。
支援金は部活動や課外活動、資格取得などに使ってもらう。対象は都立高、私立高に通う300人程度を想定。7月に募集し、9月にも支給する考えだ。2023年度当初予算案に約2千万円を計上した。
国の「高校生等奨学給付金」は低所得ではあるが課税される世帯は対象外となるため、年収が約300万円以下の世帯の高校生を独自に支援することにした。
近藤区長は「小中学校から高校、大学へと切れ目のない支援を拡大していく。高校生には好きな学校外活動を思い切りしてほしい」と話した。
一般会計の総額は3159億円で9年連続で過去最大を更新した。(石平道典)
杉並区
区民から使い道募る参加型予算
東京都杉並区の岸本聡子区長は31日、基金の使い道を区民から募る「参加型予算」のモデル事業などを盛り込んだ2023年度一般会計予算案を発表した。参加型予算は都内の市区町村で初めてという。
モデル事業では、国から区に分配される森林保全目的の基金の使い道を、インターネットなどで区民から募る。実現可能な案を選び、24年度予算案に盛り込むことを目指す。アイデアの募集や広報の費用として70万円を計上した。区民と区長の意見交換会や、気候変動に関する区民同士の議論を区政に生かす取り組みなどにも計1500万円を計上した。
区立学校の給食費については、増額分を区が負担し、食材費の高騰分は学校に支給するとした。
区民との対話と給食費無償化は、昨年6月に初当選した岸本区長の選挙公約だった。岸本区長は31日、給食費について「無償化を進めることに変わりはなく、前向きに検討している。財源だけが壁。議論を進めたい」と話した。(松田果穂)
■■■1月30日■■■
港区
出産費用、実質ゼロに
港区は1月30日、出産費用を実質ゼロにすることをめざす助成金アップなどを盛り込んだ2023年度一般会計予算案を発表した。2人以上の未就学児を持つ家庭が積極的に外出できるよう、1世帯あたり年間2万4千円分のタクシー券を配る事業も始める。
出産費用を巡り、政府は4月から、出産時にもらえる出産育児一時金を現在の42万円から50万円に引き上げる方針。区はこれまで、実際にかかった出産費用について73万円を上限に、国の一時金との差額を独自助成してきた。一方、昨年の調査で区内での出産費用は平均約81万円と判明。そこで助成の上限額を81万円に引き上げ、自己負担ゼロをめざすことにした。
助成制度には約5億5千万円を計上。記者会見で武井雅昭区長は「出産や育児に関する不安と負担となくしていきたい」と述べた。
教育分野では、全10校の区立中学校で行われている計107の部活動すべてに部活指導員を配置。また、全19校の区立小学校5、6年生で教科担任制を実施するため、外国語や体育、理科、社会などを担当する講師を各校1人ずつ配置する。区は、全ての部活動と全ての小学校で導入する点で都内初だとしている。
一般会計の総額は過去2番目の規模となる1632億7千万円。(細沢礼輝)
文京区
16~18歳に月5千円給付
文京区は30日、区内に住む16~18歳を対象に月5千円を給付する子育て支援策を発表した。また今後、児童手当の所得制限が撤廃されない場合、対象外になっている高所得世帯にも、中学生以下の子ども1人につき月5千円を支援するとしている。
区によると、区内の16~18歳は5千人。大学受験など教育や活動の幅が広がるにもかかわらず、国の児童手当では対象外となっている高校生世代への支援拡充を図る。0歳~中学生世代についても、所得制限で手当支給の対象外となる区内の1万1千人に、区独自の支援策を設けた。
成沢広修区長は「この支援策で、18歳までの子どもがいる家庭に対して所得制限なく支援が行き渡るようになる」と話した。
いずれも2023年度の補正予算での計上を予定しており、計10億円程度を見込む。都による所得制限なしでの0~18歳への月5千円給付策を受けて、区でも支援策を検討した。ただ、国の動向や都による給付の手続きが定まっていないとして、当初予算案には盛り込まなかった。(津田六平)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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