要介護5のコラムニスト神足裕司さん(65)は11年前にくも膜下出血を発症してから、1人では動けず、しゃべれず、24時間態勢でケアを受けています。それでも川崎市内の自宅で暮らし、ウェブ上にコラムを執筆し、妻の明子さん(63)の運転で各地を取材しています。元気なころは黒縁メガネに蝶(ちょう)ネクタイがトレードマークの“メディアの寵児(ちょうじ)”で、全国を飛び回っていました。豪放磊落(らいらく)で、家にいる時間はほんのわずか。そんな夫との日々を「ここ10年はずっと一緒にいるから、トータルすれば普通の夫婦並み」と明子さんは笑います。二人のなれ初めは1980年代に放送された人気ドラマ「男女7人夏物語」の脚本にも影響を与えています。今も仲むつまじい夫婦の原点には、同郷の亡き先輩から贈られた1枚のイラストがありました。
1984年夏、神足さんは同じ広島県出身で7歳上のイラストレーター渡辺和博さんと単行本「金魂巻」を出版しました。女子アナや医者、グラフィックデザイナー、主婦などの職業や身分を31に分類し、イケてる金持ちとイケてない貧乏人に分けて「マル金(きん)」「マルビ」と命名し、服装やライフスタイルを露骨に比べて解説。当時「一億総中流」とされる日本社会がバブル景気に沸き始めたころで、階層や所得の差を笑いと皮肉でつづった作品は瞬く間にベストセラーになり、「マル金、マルビ」は第1回流行語大賞に選ばれました。
翌85年、28歳の神足さんは、2歳下の明子さんと結婚しました。二人の出会いは、神足さんがまだ慶大3年生だったころにさかのぼります。すでにスポーツ紙に連載コラムを持つ学生ライターとして出版社に出入りしていた神足さんは、天真らんまんで可愛らしい契約社員の女性編集者に一目ぼれ。それが明子さんで、過激さで知られた少女向け雑誌「ギャルズライフ」に所属する、“マル金”の社長令嬢でした。
一方の神足さんは、広島県の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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