日本各地で毎年のように豪雨災害が相次ぐ。治水はもはや、ダムや堤防の整備といった川の対策だけでは対処できないとして、流域全体で対策を講じて被害を軽減しようという「流域治水」が広がっている。田んぼや森林の機能を生かしたり、雨水をためて地面にしみ込ませたり。庭先でできる取り組みもある。(山野拓郎、編集委員・佐々木英輔、グラフィック=米沢章憲)
ゆっくり浸透を増やす 「雨庭」づくりも
2005年の豪雨などで浸水被害が出た東京都世田谷区。豪雨対策・下水道整備課が入る二子玉川分庁舎近くの車道脇の植え込みに「この道路は降った雨を地下にゆっくり浸透させています」という看板が立つ。
アスファルトやコンクリートに覆われた道路は水が地下に浸透しにくく、降った雨はそのまま川や下水道へと流れ込む。森林や田畑も少なく、水がたまりにくい。その結果、雨水が一気に集まって排水が追いつかなくなるのが、都市型の浸水被害の特徴だった。
区は、来年改定する予定の「豪雨対策行動計画」の素案に、流域治水の強化を盛り込んだ。河川や下水道の整備、雨水の貯留や浸透といった対策を都と連携して推進する方針だ。
すでに、区全体で55・8万立方メートルをためられる態勢を昨年度までに整えた。公園のくぼ地は、普段は遊び場だが、雨が降ったときは水がたまる。ハナミズキやドウダンツツジの植栽帯に雨が集まるようにした道路や、アスファルトをはがした「緑化駐車場」も導入した。これらの「雨水流出抑制施設」の整備で、1時間に75ミリの雨が降ったとき、1割に当たる7・9ミリ分を一時的にためることができるという。
公共施設だけでなく、住民が自宅の庭に雨水タンクを置いたり、地面に砂利などを敷いて水を浸透させたりする「雨庭」も有効だ。来月には雨庭づくり教室を開催する予定で、雨水タンクや浸透ますを設置した場合の助成制度もある。
豪雨対策・下水道整備課の村田義人課長は「一つひとつの施設でためられる水は多くないかもしれないが、集まれば減災に大きな力になる。住民のみなさんと協力して取り組みを広げていきたい」と話す。
「田んぼダム」の取り組みも
水田が多い地域では、「田んぼダム」の取り組みも広がる。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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