受刑者向けに絵手紙を教える今井洋子さん(77)
窓に鉄格子が付いた岡山刑務所(岡山市北区牟佐)の一室に静寂が漂う。机に向かうのは、丸刈り頭の20人ほどの受刑者。それぞれモチーフに選んだひまわりやトマトを見つめ、絵の具と筆で一心不乱にはがきを彩る。
篤志面接委員として月1回、希望者を対象に開く「絵手紙クラブ」。20代から60歳以上まで参加者は幅広い。指導を始めて20年以上になる。
岡山刑務所が収容するのは、執行刑期が10年以上かつ初犯の男性受刑者。墨と顔彩で絵を描いたはがきには、家族らへ伝えたい言葉を添える。犯した罪への後悔や家族への思いがにじむ。
ある受刑者は、端っこに金魚の人形が付いたマドラーの絵に添えてこう書いた。
〈涼しそうなマドラーで心の中をかきまぜると心がきれいになるかな〉
別の受刑者は、しめじの絵にこんな言葉を添えた。
〈ひとりだと思っていたけどみんなに支えられていたんだね〉
助言は「下手でもいいんだよ」だけ。技術はあまり教えない。「ありのままの心を込めれば、必ず相手に思いは伝わるから」
絵手紙との出会いは30年近く前になる。趣味探しで、百貨店の講座にふらっと足を運んだ。慣れない筆を握り、はがきに菊の花を描いた。人には見せられない出来栄えだったが、その内面を写す奥深さに引かれた。
講師となったのは4年ほどたった1996年ごろ。岡山市で障害者や終末期の患者らに教えていた98年、知り合いに法務省関係者の家族がいた縁で、岡山刑務所から誘いがかかった。「絵手紙の温かさで愛を注いであげて欲しい」
当初はためらった。「受刑者の多くは凶悪犯」という声も気になり、罪とともにある被害者の無念や悲しみも重いと感じた。最後に決断したのは「受刑者にも誰かを思う心を持って欲しい」という気持ちから。夫が背中を押してくれたのも大きかった。99年、絵手紙クラブが始まった。
忘れられない絵手紙がある。
今も刑期が続く50代前後の受…
2種類
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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