あの夜の私と同じ涙はいらない 女性警官が性被害を打ち明ける理由

 明るく、ハキハキと、被害の状況を説明する女性だなと思った。

 その前夜の帰り道、自転車の男に体を触られたという。

 警察署の一室。向き合って被害を調書にまとめていた女性警察官(40代)は、目の前の被害女性と、あの夜の自分を重ね合わせていた。

 似ているな。被害に遭った状況も、強がったことも。

 現場の確認に向かおうと、2人で署内を歩いていた時だった。

 被害女性が口にした。

 「大声を出してバッグでたたいたり、思い切り突き飛ばしたりしてやれば良かった。犯人にも、自分にも、腹が立つ」

 心の奥底に隠していた犯人への怒り。それ以上に、何もできなかった自分への情けなさ。言葉には、そんな感情がにじんでいた。

 うん、わかるよ――。

 女性警察官は、思わず口にした。

 「私も昔、夜道で急に体を触られたとき、声が出ませんでしたよ」

 25年ほど前の性被害。

 家族以外に明らかにしたのは、初めてだった。

女性警察官は、この日を境に、自らの性被害を明かすようになります。被害者たちの言葉に耳を傾けるうちに気づいたこと、同じ体験をした警察官として伝えたい言葉があります。

 中学3年の夏。

 塾帰りで午後10時になった。神戸市内のバス停からの帰り道を一人歩いていた。

 原付きバイクの男が、4、5メートル先でUターンしてこっちに向かってくる。

 恐怖とヘッドライトのまぶし…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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