あの日、夜中のロイホで聞こえた音を 「街の音はドキュメンタリー」

VIDEOTAPEMUSICさん=2021年12月14日午後4時38分、東京都世田谷区下北沢、御船紗子撮影

 コツコツ、ガタゴト、ザワザワ――。普段は聞き流すような音が、誰かにとって特別な意味を持つことがある。街中や自然の音を集め、楽曲をつくるアーティストVIDEOTAPEMUSICさんに、街が発する音の魅力や、東京らしい音について聞いた。

街に流れるノイズをどう知覚するか

 ――街の音や自然の音、環境音を採り入れた楽曲制作をしているそうですね。

 フィールドレコーディングという手法です。

 音楽を始めたのは2000年ぐらいのころ。ちょうど世間がVHSテープからDVDへ移り変わる時期だったんです。レンタルビデオ屋ではVHSの在庫が安くたたき売られていて。それを集め、VHSから抜き出した音をパソコンを使ってコラージュして音楽をつくり始めました。

 最近はもう少し制作方法の幅も広がって、生楽器やフィールドレコーディング素材を採り入れています。日本各地に滞在してフィールドワークをしながら、土地の文化を題材にした曲をつくったりしています。

 美大で現代音楽の授業も出ていて、今のフィールドレコーディングに興味を持つきっかけになるような音楽の知識を身につけたと思います。

 ――街の音、環境音の魅力は。

 街の音に耳を傾けるのは、街に流れるノイズをどう知覚するかということです。街にはどんな音があって、どんな人が住んでいて、どんな自然があるのか。普通に生活していたら見落としていた部分に、フォーカスするきっかけになります。

 今はイヤホンでノイズキャンセリング機能があります。外部のノイズをついつい排除してしまう。他人の生活音は不快ではあります。ですが、ちょっと目を向けることで、ノイズとして排除してしまう要素にも、「いろんな人が生活しているんだな」という気づきがある。自分の中で他者の存在に目を向けるためのレッスンなんです。

 ――あえて他者を意識するんですね。

 今の世の中は、音を聴くにし…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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