大きな背中を、ぎゅっとつかむ。「大丈夫か」。振り向いた父にそう声をかけられ、大きなヘルメットをかぶったままうなずく。その瞬間、排気音とともに風を切って加速していく。
埼玉県寄居町に住む伴場(ばんば)優真(ゆうま)さん(25)の幼いころの記憶に、父の寛さん(44)のバイクは鮮明に刻まれている。若いころ、地元暴走族のメンバーだったという父。材木店で職を得て、家族を持っても、愛車「ホンダCBX400F」に乗り続けていた。滑らかなフォルム、エンジン音がお気に入りのようだった。
だが優真さんが中学校進学直前のある日、いつもピカピカだった赤と白の車体が、庭先から消えた。
「バイクは?」
その問いに答える代わりに…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル