火曜日の午前9時半。最近の約束はもっぱらその時間だった。
広島市南区の高齢者施設。約束の時間、阿部静子さん(95)は決まってロビーの長いすにちょこんと座って待ってくれていた。
記者の私も並んで座る。
この施設に入ってから5年ほどになる。筆まめで、月に20通ほど手紙を書く。「忙しい」と笑う。新聞を読むのも好きだ。
昨年11月から、記者は新型コロナウイルスの感染拡大で施設が面会を中止した期間を挟んで、阿部さんのもとに通ってきた。
「第7波」のため、7月からは再び面会中止となり、会えなくなっている。
8月6日が近づくいま、伝えたい阿部さんの言葉がある。
「ちょっとこれは外しましょう」
昨年11月、初めて施設を訪れた記者の前で、阿部さんはマスクを取った。口元があらわになった。
のどもとはやけどの痕で引き…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル