12日で丸36年を迎える日航ジャンボ機墜落事故で夫を亡くした女性が7日、遺体の安置場所となり、遺族を支えてくれた群馬県藤岡市への感謝を込めて、自らが手がけた絵本の読み聞かせ会をリモートで開く。藤岡市とカナダの友好都市とをオンラインで結び、英語で「春は必ず来る」と話しかける。
「誰にでも人生には冬の時期があると思います。でも諦めずに前を向いて歩いていけば、新しい幸せが来ると信じています」
大阪府箕面(みのお)市の谷口真知子さん(73)は自宅近くの事務所から、こう語りかけるつもりだ。当初は藤岡市内での開催を企画していた。だが、新型コロナウイルスの急拡大でリモートに変更した。
1985年8月12日、出張帰りに羽田発大阪行きの日航機に乗った夫の正勝さん(当時40)を失った。群馬県上野村の御巣鷹の尾根に「まち子 子供よろしく」とメモが残っていた。
谷口さんはショックで倒れ、代わりに当時中学1年の長男が現場へ向かった。テレビを見て驚いた。両脇を抱えられ、遺体が安置された旧藤岡市民体育館へ向かう長男の姿だった。後に藤岡市民らが食べ物や漫画を差し入れて支えてくれたことを知った。
絶望のなか、正勝さんが事故の5年前に庭に植えた柿の木が励ましてくれた。秋には初めて実をつけた。長男と小学3年だった次男は結婚し、孫も生まれた。少しずつ今ある幸せを感じられるようになった。
2016年には知人の勧めで事故前後の家族の物語をまとめた絵本「パパの柿の木」を出版。大阪を中心に20校以上で読み聞かせをした縁で、地元のインターナショナルスクールの生徒らが協力し、昨年、英訳版も完成した。
数年前から、恩返しの思いを込めて群馬でも読み聞かせをしたいと思ってきたが実現できていなかった。
今回の読み聞かせは、藤岡市の市民団体「藤岡―リジャイナかけ橋プロジェクト」などの協力で実現し、藤岡市からは約20人が参加する。カナダの子どもたちにも呼びかけている。初めてとなる英語での読み聞かせ。練習してきた英語で、悲しみの先にたどり着いた思いを語る。
「悲しみに打ちのめされ立ち…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル