あの記憶を未来へ 原発避難者らが「声優」務めアニメに

 東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した福島の人たちと支援者らが、実話に基づくアニメと絵本を作った。記憶を未来に伝え、惨禍を繰り返してほしくないとの思いが込められている。

広島の紙芝居作家が描く

 広島市の「まち物語制作委員会」代表で、紙芝居作家・いくまさ鉄平としても活動する福本英伸さん(64)は、震災被災地の民話や被災体験を約170の紙芝居にしてきた。「広島の被爆者と同様、そのときの感情がよみがえる当事者の語りは、被害の実相を伝える」。2014年にできた福島県浪江町民らによる「浪江まち物語つたえ隊」などが国内外で上演してきた。

 震災から10年を迎え、より多くの人に伝えようと、紙芝居をアニメにしようと考えた。過去の紙芝居から10作品を選び、アニメの作画・脚本、絵本の絵と文を福本さんが手がけて現在6作品ができている。被災者らが「声優」を務め、福島のシンガー・ソングライターや音楽家も参加。物語に関わる被災者が登場し、体験や思いを語る「未来へのメッセージ」(5作品に収録)は作品のリアリティーをさらに高める。約30~55分の各アニメを要約した絵本(A4判14ページ)も作った。

 「つたえ隊」のメンバーで浪江町から避難した岡洋子さん(60)=福島市=、娘の美里さん(31)も声で参加した。作品は「なみえ母娘避難物語 私は帰らない」。

 施設で働く女性が救助を待つ高齢者を介護するが、疲労で倒れる。それでも「私は帰らない」と言う女性を、母は迎えにも行けず、家に帰れとも言えない。母は施設職員にあることを頼む――。

 実話がもとになっており、女性は美里さん、母は岡さんのことだ。アニメでは自分がもとになった役を、それぞれが演じる。

 「私たちの経験を通して亡くなった人や故郷に帰れない人の思いを伝え、普通の生活のありがたさ、命の大切さを次の世代につなげてもらえたら」(岡さん)

大地康雄さんも出演

 俳優の大地康雄さん(69)も参加する。5年前に先行してアニメ化された「浪江町消防団物語 無念」で主人公の声を演じた。原発事故の影響で、助けられたかもしれない「命」のもとへ向かえなかった消防団員の実話に基づく物語。大地さんは、収録を終えたとき、被災者らが感涙する姿を見て「みなさんの深い悲しみを思い知らされた」という。

 「真の幸せは、ひとの役に立つ…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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