あの震災を取材したのに ハザードマップ見ず家を決めた記者の自戒

 引っ越し当日、鍵とともに、災害のリスクを表示するハザードマップを手渡され、「まずい」と思った。この春に愛知県内に異動してきた記者(56)の苦い体験だ。最も配慮すべき住まいの安全になぜ注意を払わなかったのか、自戒を込めて報告したい。

鍵と一緒に渡された「マップ」

 4月、豊橋支局への異動に伴い、支局まで車で10分足らずのアパートの1階に入居した。豊橋駅までは2キロ以上離れているが、近くにスーパーマーケットが複数ある。新築物件で、バスタブもトイレもキッチンも新品だった。転勤前とほぼ同じ家賃ということのほかは、「間取り、築年数、スーパーに近いこと」だけを気にしていた。車で少し走ると海がある場所とは考えずに契約した。

 鍵と一緒に不動産業者から「洪水」と「内水」の2種類のハザードマップを受け取って、衝撃を受けた。浸水する可能性があるエリアだと初めて知ったからだ。津波による浸水も頭をよぎった。一瞬、別の物件にしようかとも思ったが、会社を通じた契約手続きも済み、数時間後には荷物が届く予定だった。あきらめるしかなかった。

 2007~09年、仙台に勤務した。当時は津波のことを考えたこともなかったが、11年3月の東日本大震災発生の翌日、現地入りし、住んでいたときには想像もしなかった惨状を目の当たりにした。

 災害の怖さは知っているはずなのに、異動前の忙しさで、頭から抜け落ちてしまっていた。

地震、水害、土砂災害…。さまざまな災害にどう備えればいいのか。記事後半では、専門家によるハザードマップの見方も紹介します。

きちんと確認する同僚も 気にしない人も

 南海トラフ地震が起これば…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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