いしり、ぎんなん、梨…記者お勧め、北陸ぶらり秋の味覚

 厳しい残暑もようやく収まり、朝晩の涼しさに秋の訪れを感じる今日このごろ。そんな季節に増すものといえば、「食欲」だ。北陸地方の秋の味覚をお届けします。

濃厚な風味 能登の「いしり」

 魚介類を塩漬けにし、発酵させた調味料「魚醬(ぎょしょう)」。能登は、イワシやイカのはらわたを使った魚醬「いしり(いしる)」の産地だ。石川県水産課によると、県内には約20の製造業者がある。

 イカ漁が盛んな能登町の小木漁港近くで海産物の加工・販売を手がける「カネイシ」では、イカの肝臓を原料にいしりを製造し、県内外に年間を通じて出荷するが、需要が増えるのは秋冬。「鍋物や煮物に使う機会が増えるからでしょう」と3代目の新谷(しんや)伸一さん(51)。

 うまみが強く、濃厚な風味が長く口に残るのが特徴。鍋物や煮物の隠し味として使うのがおすすめだという。例えば、里芋とイカの煮物に加えて味のアクセントに。ラーメンのスープやチャーハンに加えると、いつもと少し違った味が楽しめる。「いしりと水を合わせて大根やニンジンを漬けてもおいしい。使い方は自由です」

 熟成が進むいしりの貯蔵庫を案内してもらった。扉を開けると、イカの塩辛のようなにおいが。ご飯が進みそうだ。冬の終わりから春先に仕込み、1年半~2年熟成させる。高さ2メートル弱のタンクの中に、黒いいしりが見えた。コロナ禍で自宅での食事が増えたいま、その地域ならではの調味料に目を向けるいい機会かもしれない。(沼田千賀子)

輝く色合い 永平寺の「ぎんなん」

 ギンナンの収穫が、福井県永平寺町松岡志比堺の山林で始まっている。一帯のイチョウの木には、黄金色のギンナンが鈴なりに実っていて、収穫作業は11月末ごろまで続くという。

 「越前ぎんなん生産組合」では、約1600本のイチョウの木を育てている。このうち、わせの品種は今月14日から収穫作業が始まった。種の中が鮮やかなエメラルドグリーンなのが特徴という。

 青空が広がった21日には、組合代表の河合康二さん(71)らがはしごや脚立を使い、高い枝から直径5センチほどのギンナンをもぎ、下のシートに落とした。

 例年並みの約6トンの収穫を見込む。収穫後は、果肉を取り除いて乾燥させて、東京や大阪などに出荷する。町内の道の駅などでも販売するという。

 茶わん蒸し、炊き込みごはん、かき揚げなど味わい方はいろいろ。シンプルにフライパンなどでいって食べるのもいい。河合さんは「輝くような色合いと、食味を楽しんでほしい」と話している。(八百板一平)

シャキシャキ食感 富山の「あきづき」

 富山市中心部から車で20分ほど。同市呉羽地区は北陸有数の梨の生産地だ。

 なだらかな丘陵地帯に広がる梨畑に、約280戸の農家が「幸水」「豊水」「新高」を育てているが、近年は、これら3種を交配・改良して生まれた大ぶりの品種「あきづき」が徐々に人気を集めているという。

 9月はまさに収穫の最盛期。同地区の道沿いには梨農家の直売が並ぶ。

 買って食べてみた。

 普通の梨よりも一回り大きく、その重さは1個450グラムほど。でも決して大味ではない。しゃきしゃきと気持ちいい食感の後に、口にたっぷりの甘みが広がり、驚かされる。

 評判が評判を呼び、今では県外からの購入希望者も少なくない。ただ生産量はまだまだ少なく「全生産量の約半数を県内で消費するため県外には多くは流通していない」(「JAなのはな呉羽梨選果場」の土田昭場長)とのこと。

 どうしても食べたければ、ここまで足を運ぶのが確実だ。同地区の梨農家・神名学(かんなまなぶ)さん(51)は「呉羽の土が甘い梨を生み出します。当地ならではの梨を是非味わって」と話していた。(木村聖)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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