子供たちが身を守る法律などを分かりやすくまとめた「こども六法」(1296円、弘文堂)が異例の売れ行きを見せている。8月20日の発売以降4刷となり、5万部を超えた。小学生時代、いじめを受けたことが執筆のきっかけだったという著者で教育研究者の山崎聡一郎さん(25)は「小学生や家族を含めて法律を学ぶきっかけになってくれれば、うれしいですね」と語る。(久保 阿礼)
「こども六法」は山崎さんの体験から生まれた一冊だ。いじめが法律を学ぶきっかけになった。
「小5の時、障害を持った友人をいじめからかばったところ、暴言や暴力などを受け、サンドバッグ状態になりました。6年生の時には、下校途中に後ろから跳び蹴りをされ、転倒して左手首を骨折しました」
いじめから逃れるため、私立中学に入り、図書館で六法全書に出合った。特にニュースで頻繁に触れる刑法を読み、衝撃を受けたという。「小学生の時に、自分が受けたいじめは実は犯罪なのではないか。法律をなぜ知らなかったのだろうか、と。日本国憲法を読むと、『自分には人権というものがあるらしい』と。法律の仕組みにとても関心を持ちました」
慶応大総合政策部に進み、研究テーマに「法教育を通じたいじめ問題の解決」を選んだ。「法律用語は難解で、子供が分かりやすく読める法律書がなかった」。研究奨励金を受け、こども六法の執筆を開始。プロトタイプ(原型)として、400部を教育関係者らに配布した。クラウドファンディングで費用を集め、出版につなげた。
著書はA5判で全部で202ページ。タイトルにある六法は通常、憲法、刑法、刑事訴訟法、民法、民事訴訟法、商法を指す。山崎さんは独自に刑法、刑事訴訟法、少年法、民法、民事訴訟法、憲法、「いじめ対策推進法」などを選んだ。「子供たちに関わりのある条文」を選んで、「極力かみ砕いて」解説した。動物のイラストやコラムを入れ、なぜ法律に違反するのか丁寧に説明。全ての漢字にルビを振り、誰でも読めるように工夫した。
共同正犯(刑法60条)については「2人で犯罪を犯しても責任は半分にはならないよ」と単純明快に解説。学校生活であるからかいや暴言は、刑法上は侮辱罪、名誉毀損(きそん)罪にあたる可能性があると指摘し、同時に刑事告訴が必要となる「親告罪」であることも触れた。「暴言を繰り返し吐かれた時、私が訴えなかったから、曖昧なまま終わってしまったのかと思いました。知っていることが身を守ることにつながります」。いじめを受けた時の対策も「メールを残す」、「相手に壊されたものを残していく」などとし、身を守るためのアドバイスや相談窓口も載せた。
「犯罪」対策も 山崎さんは研究活動などの合間を縫い、書店を回ったり講演活動もこなしている。「いじめは犯罪だと知ってほしい」。出版後、図書館や小学校などからも注文があった。「親子で読みたい」という声もあった。
「特に10~15歳に読んでほしいですね。小学1年生から『読みました』という話も聞きました。技能実習生や日本語を勉強している外国人の方からも『使いたい』という声もあります。より深く法律を学んでくれたら、うれしいですね」
◆山崎 聡一郎 (やまさき・そういちろう)1993年10月26日、埼玉県生まれ。25歳。県立熊谷高卒業後、慶応大総合政策学部に進学。英オックスフォード大に短期留学し、政治教育への演劇的手法の導入方法を学ぶ。19年3月、一橋大大学院社会学研究科修士課程修了。教育研究者、写真家、劇団四季のミュージカル俳優として活動する。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース