近所にあるスーパーの青果売り場へ行き、入って左手の山から一番きれいなのを選んで買った。自転車の前かごに入れ、ペダルを踏んで、通い慣れた道を走り出す。静岡市の左座(さざ)歩実(あゆみ)さん(16)はその日、どうしてもしたいことがあった。
駅を過ぎ、いつもの駐輪場に自転車をとめると、駅前ビルの2階にかかる「戸田書店」の看板を見上げた。思い出の書店がきょう閉店する。
店内は、いつもより少し混んでいた。本の背表紙を眺めながら、書棚の間を歩く。4歳の時初めてこの本屋に来て、「はらぺこあおむし」を買ってもらった。小学生の時は青い鳥文庫を、中学生の時は参考書を買った。パラパラとめくるたび、新しい世界に踏み出す高揚感に包まれた。
高校へと向かう朝、「いつもの一日がはじまるな」と思う。その「一日」には、友達もいて、家族もいて、英語や数学や期末テストがあって、それはそれで満足なのだけれど、なんとなく、そんなもの全て投げ出してどこか遠くに行ってしまいたくなる日がある。
そんな時はいつも、物語の世界…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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