3月末で営業を休止する志摩マリンランド(三重県志摩市)で1日、特別展が始まった。来館者の思い出に残ることを意識し、8人の飼育員によるおすすめの生き物を並べ、手作りのパネルも添えられている。
最後となる特別展で展示されているのは魚類を中心に58種類、計約180点。企画した飼育員の杉山弘樹さん(32)にとって、選んだ生き物たちは、どれも深い思い入れがあるものだ。
房総半島以南に生息するベニツケガニは、「泳ぐカニ」として知られている。実際に泳ぐ姿を目の当たりにした杉山さんは「衝撃のあまり、のけぞりそうになった」と振り返る。
ウミウシの仲間にも深い愛を注いできた。捕食したクラゲの毒針を使い、自らの身を守るために役立てる種類もいるという。杉山さんは「そのタフさには圧倒される」と話す。
最初に任されたマンボウは…
館長を務める里中知之さん(54)の思いが向けられる生き物は、この水族館のシンボル的な存在のマンボウだ。日本大学で水産学を学んだ後、研究員として1989年に入社した。「最初に任されたマンボウは、見ているだけで癒やされる愛らしい表情をしていた」と語る。
そんな里中さんは、89年生まれの杉山さんにとってあこがれの存在だ。奈良県出身の杉山さんが小学校4年で初めて志摩マリンランドを訪れたとき、バックヤードを案内してくれたのが里中さんだった。
初めてマンボウを見た杉山さんは当時、「ゲームのキャラクターみたいで、空想上の生き物かと思った」と驚いた。水族館の飼育員になることが将来の目標になり、魅力的な伊勢志摩の生き物が集まっている志摩マリンランドで働くことを夢見るようになった。
生き物のかわいさや面白さ、多様さを間近で見てきたからこそ、杉山さんは最後の特別展を「限られた時間ではあるが、改めて生き物たちの魅力や特徴を伝えることで、多くの人の思い出に残るものにしたい」と考えている。
志摩マリンランドは70年に開館した。1月に営業休止が発表されると、県内外から名残を惜しむ多くのファンらが訪れている。120台分の駐車場が満車になることもある。3月の土日と20日以降は閉館時間を1時間延長して対応する。
問い合わせは志摩マリンランド(0599・43・1225)。(安田琢典)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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