本をめぐる時間旅行にお付き合いください。九州一の繁華街、福岡市・天神では1990年代末に大型書店が林立し「ブック戦争」と呼ばれた。しかし2000年代に閉店が相次ぎ、再開発の影響もあって来年までに在庫数上位の2店舗が姿を消す。天神の大型書店の「大転換期」を前に、私たちはどこで本を買い、知的好奇心を満たしてきたのか、人々の記憶や当時の資料を基に振り返ってみる。
1970年代~80年代
最初に天神に登場した大型書店は1971年に福岡ショッパーズプラザにできた、りーぶる天神だった。開店当日の新聞広告には「童話から洋書・専門書まで常時25万冊!!」「五階独占!一九〇〇平米」と、福岡市民を驚かせる数字が並んだ。「写真集や楽譜などが容易に手に入った」。同市東区で学習塾を営む竹林由起夫さんは、当時中学生。「このころから本を買うため天神に行く習慣ができた」
りーぶるができる前、天神では新天町のしにせ、福岡金文堂と積文館が書店の代表だった。大型店ではないが、自宅近くの「街の本屋」にはない専門書や参考書はここでそろえた。
76年、天神コアの開業時に紀伊国屋書店福岡店がオープンした。6階のワンフロアを占め40万冊の在庫をうたう巨大店は、東京資本の有名ブランドゆえ地元関係者に「黒船」と呼ばれた。
しかし市民は歓迎ムードだった。「新しい文化の風が吹いてきたようだった」。当時九州大1年だった医師の田北昌史さん(63)=同市早良区=が語る。「専門書は大学生協にもあったが、品揃えは圧倒的に紀伊国屋だった」
田北さんより10歳年下の記者は、天神コアのエレベーターが紀伊国屋に行くオジサンたちで満杯だったことを思い出す。コアはおしゃれなファッションビルではなく知の集積地だった。やがて紀伊国屋が天神の書店の“顔”となっていく。
1990年代
記者は91年、天神の書店を取材し、記事にまとめた。主なものが大小合わせて12店があった。各店とも個性を競っていた。りーぶるや紀伊国屋は展示スペースのフェアを通して文化情報を発信し、丸善イムズ店は店舗をしゃれたインテリア店のようにした。
90年代後半に大きな波が来た。大型店の開店ラッシュだ。96年=リブロ(岩田屋Zサイド、40万冊)▽97年=紀伊国屋・博多大丸店(8万冊)、八重洲ブックセンター(福岡三越、30万冊)。97年はイムズなどから福岡ビルに丸善(75万冊)が移転した。
詩人の樋口伸子さん(78)=同市東区=は「喫茶店のある書店もでき、待ち合わせでよく使った。『本を買う』だけじゃない書店の魅力が伝わった」と振り返る。96年は、全国で出版物(書籍と雑誌の合計)の売り上げが史上最高の約2兆6564億円に達した年。天神の出店ラッシュはそんな好景気が背景にあるが、「福岡の都市規模と比べ、書店数が多いと感じたが…」と樋口さん。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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