茨城県那珂市の下大賀遺跡で、平安時代の竪穴式住居跡から、人物の顔が彫られたかまどの石製支脚が見つかった。遺跡を発掘調査した茨城県教育財団が18日、発表した。人物画が描かれたかまどの支脚が発掘されたのは全国で3例目だという。同財団は、かまどに宿るとされた「竈神(かまどがみ)信仰」との関連性を指摘している。
石製支脚は、たき火の近くに置き、かまどで使う水の入った瓶(かめ)を下から固定していた。長さ約26センチ、幅約9センチ。9世紀中ごろのものとみられる。瓶の上にさらに入れ物を置いて、米を蒸すなどしていた。
支脚正面に全身の人物画、側面には顔が彫られている。人物画は輪郭が二重になっている。同財団の樫村宣行さんは「二重の輪郭は後光と考えられ、衣服の特徴からも神か仏を描いたのでは」と言う。
古代中国では、かまどには竈神が宿り、人々の行いを天上に昇って「天帝」に報告すると信じられていた。日本でも、かまどの伝来とともに竈神信仰が広がったとされる。
なぜ逆さなのか?
焼けて変色した跡の位置から、支脚は人物画が逆さまになるように据えられていたことがわかる。樫村さんは「竈神が天上に昇って自分の悪行を報告するのを防ぐため、逆さに置いたのでは」と推察する。
人物画が描かれたかまどの支脚は、千葉県酒々井(しすい)町の飯積原山遺跡や埼玉県深谷市の幡羅(はら)遺跡でも見つかっているが、いずれも土製で、石製のものが発掘されたのは全国初だという。
樫村さんは「竈神信仰は古事記や続日本紀にも記載があるが、今回の発見で考古学的にも真実味を増した。今後も研究を重ねて、人間にとっての宗教とは何か、ということを調べていきたい」と話している。
石製支脚は、2月1日~26日に同県桜川市の真壁伝承館で開かれる「発掘!! いばらき2022」に展示される。同19日には、同市の大和ふれあいセンターで、金沢大特任准教授の佐々木由香氏が、同県つくば市の上境旭台貝塚の出土品から新たにわかったことについて講演する。講演は参加費無料、事前申込制で、申し込みはネットで「発掘情報いばらき」と検索すると出てくる同財団のホームページか、電話(029・225・6587)へ。(林瞬)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル