話すときに言葉が出にくかったり、同じ音を繰り返したりする吃音(きつおん)。周囲の理解や支援を得られず自ら命を絶つ人もいる。吃音がある久留米大4年の亀井直哉さん(22)=福岡県篠栗町=は音読の授業や同級生たちのからかいに悩まされたが、周囲に吃音のことを公言することで理解を広げ、乗り越えてきた。目標は言語聴覚士。吃音に悩む仲間を支える存在を目指す。 【写真】福岡言友会が開く例会。人前で話す練習にも 亀井さんが自分の発話に違和感を持ったのは小学校高学年。授業中に何度も言葉に詰まり、話の冒頭に「あのー」「えーっと」と付けて、その場をやり過ごすようになった。 中学に上がると状態は悪化。朝の出欠確認も「はい」と返事ができず「は、は…」と詰まった。同級生から笑われ、まねされた。
学校に行くのも嫌に
国語の朗読は特に苦労した。うまく言おうとすると喉が締め付けられるようになる。運動会の感想文の発表では前夜、原稿用紙2枚余りを暗記して臨んだが、5分間の制限時間内に半分しか読めなかった。教師は「無理に全部言わず省略すれば良かったね」と見当違いの言葉で気遣った。授業中、挙手しなくなった。学校に行くのも嫌だった。 「吃音」という言葉を知ったのは中学3年の冬。スクールカウンセラーから指摘された。知ったからといって、状況は何も変わらない。「これからどうやって生きていくんだろう」と頭が真っ白になった。
「皆に吃音のことを話してみない?」
高校1年の夏、九州大病院の吃音外来を受診した。医師の菊池良和さん(42)と一緒にメトロノームのリズムに合わせて本を音読。言語聴覚士の指導も受け、発話を練習した。ようやく光が見えた気がした。 一方、高校でも笑われることは続いていた。言語聴覚士に相談すると「皆に吃音のことを話してみない?」と提案された。担任には入学後すぐに知らせていたが、同級生には伝えていない。「楽になれるのなら…」。うなずいた。
授業中も気楽に
数日後、亀井さんは教壇に立った。隣で担任が皆に語りかけた。「彼の話し方に違いがあるのは気付いていると思う。吃音という一種の病気だ。からかったりまねしたりすることはやめよう」。亀井さんは「よろしくお願いします」と声を絞り出した。 放課後、心配とは裏腹に友人は普通に接してくれた。心を覆っていた分厚い雲が晴れるようだった。授業中も気楽になった。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース