かんぽ生命保険の不適切販売を報じた昨年4月のNHKの番組「クローズアップ現代+」が日本郵政グループから抗議を受け、NHKの最高意思決定機関にあたる経営委員会(委員長・石原進JR九州相談役)が適切な対応を求め、NHKの上田良一会長を注意していた。関係者への取材でわかった。
一連のやりとりには放送行政を所管する総務省の元事務次官、鈴木康雄・日本郵政副社長もかかわっており、上田会長は郵政側に「誠に遺憾」と釈明する文書を送ったという。個別の苦情に、公共放送のトップが対応する異常さを指摘する専門家もいる。
関係者によると、かんぽ生命保険の不適切な営業実態を報じた「クローズアップ現代+」は、続編の放送を目指し、ツイッターで情報提供を呼びかける動画を投稿した。この動画に対し郵政側が一方的な内容で事前取材もなかったとし、削除を求めた。関係者によると、郵政側が「押し売り」「詐欺まがい」といった表現が名誉を毀損(きそん)するなどと主張したという。
その後、番組幹部が郵政側に事情を説明する際、「番組制作と経営は分離し、会長は番組制作に関与していない」などと発言。郵政側が「放送法では番組の最終責任者は会長だ」と反論し、釈明を求める文書を昨年8月2日付で上田会長に送付。NHKの続編取材も拒否したという。動画については、同月、削除され、続編もいったん延期された。
さらに、郵政側は同10月5日付で経営委宛てにNHKの「ガバナンス(統治)体制の検証」を求める書面を送付。経営委は議論の上、番組幹部の発言は誤りだと判断し、同23日に石原委員長が上田会長に「ガバナンス体制の強化」名目で口頭で注意した。上田会長は同11月6日付で番組幹部の発言を「誠に遺憾」とする文書を届けた。翌日、郵政側は「充分意のあるところをお汲(く)み取りいただいた」とした上で、「一応の区切り」とする文書を元総務事務次官の鈴木副社長名で返した。
NHK広報局や石原委員長は今月26日、それぞれ「自主・自律や番組編集の自由が損なわれた事実はない」とするコメントを発表した。
立教大学の砂川浩慶教授(メデ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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