NHK経営委員会が2018年、当時NHKの会長だった上田良一氏を厳重注意した問題で、NHK自身が設置する第三者機関は前田晃伸会長に対し、議論の経緯が分かる経営委議事録を全面的に開示すべきだと指摘する答申を出した。現在は、当時の議論の要約が公開されている。
上田氏への厳重注意を巡っては、「クローズアップ現代+」が2018年7月、同4月に報じたかんぽ生命保険の不正販売問題の番組の続編に向け情報提供を呼びかける動画をネットで流し、日本郵政グループがNHKに抗議、同局の最高意思決定機関の経営委にもガバナンスの検証を求めた。これを受け経営委は同10月23日、ガバナンス強化名目で上田氏を厳重注意した。議論の中で森下俊三委員長代行(現委員長)らが会長を前に番組制作手法を批判するなどしたとされ、放送法が禁じる経営委員の番組への干渉にあたるとの指摘もある。
放送法は経営の透明性をはかるため、委員長に経営委の議事録作成と公表を義務づけている。第三者機関「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」が4日付で出した答申によると、厳重注意を巡っては、「各経営委員が率直な意見を述べ合い、突っ込んだ検討が行われていることが窺(うかが)われる」内容の逐語的な議事録が存在。「会長に係るガバナンスの問題というような運営上の問題について、各委員がどのような意見を持ち、どのような議論が行われ、どのような結論に達したのかについては、より強く透明性が求められる」としている。
NHK側は「非公表を前提とした審議・検討に関する内容。開示することにより、その審議、検討または協議が円滑に行われることを阻害するおそれがある」などと主張したが、答申は「肯定できない」とし、開示すべきだと結論づけた。
また答申は「要約された文書は開示の求めの対象文書との同一性を失ったもの。情報公開制度は、対象文書をありのままに見せることが当然の大前提で、不開示事由がある場合は黒塗りするなどして回答するもの」「公開制度の対象となる機関自らが対象文書に手を加えることは制度上予定されていないことであり、それは対象文書の改ざんというそしりを受けかねない危険をはらむ」と指摘。「視聴者に対する十分な説明責任を果たすことが求められており、議事録を速やかに開示することが、今後のNHKおよび経営委の運営にとっても必要なことと言っても過言ではない」とした。
今回答申を出した第三者機関は…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル