岩手県の自然豊かな町で暮らすしろつさん(45)。
家族3人、いつもその中心にいるのは、4歳の息子、はるたくんだ。
しろつさんには忘れられないある出来事がある。
家族で買い物をしたあと、ふらりと立ち寄ったリサイクルショップでのこと。ふと、はるたくんが、ほかの人形とともにつり下げてあった一つのウルトラマン人形を見つめ、「連れて帰りたい」と言った。税込み200円のシールが貼られたソフトビニール製のその人形は、あちこちの塗装がはげていた。
しろつさんが「ボロボロだけどいいの?」と尋ねると、予想外の答えが返ってきた。
「たくさん戦って、みんなを守ってケガだらけなんだよ。かわいそうだから連れて帰る」
家に連れて帰ると、はるたくんはいたわるようにウルトラマンの体をなで、ばんそうこうを貼った。
しろつさんが撮影した、手当てをしたウルトラマンと一緒に寝ている姿はツイッターで多くの反響が寄せられた。
しろつさんが頭に浮かべるのは、ウルトラマンA(エース)の最終話での名言だ。
「優しさを失わないでくれ。弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人たちとも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえその気持ちが何百回裏切られようと。それが私の最後の願いだ」
息子のはるたくんにも、ただただ、優しさを忘れずに、すくすくと育って欲しいと願っている。
◇
エースに変身するTACの北斗星司役だった高峰圭二さん(76)。高峰さんもこのエースの言葉には思い入れがある。
最終話の脚本を書いたのは市川森一さん(2011年死去)。地球の子どもたちにいじめられていた宇宙人を救った北斗隊員。しかし、それは宿敵の残党で、みんなを救うために、北斗隊員は正体を明かしてエースに変身し、地球を去るというエピソードだ。最後にエースが残したのが、あの言葉だった。
高峰さんは「災害などで、人々に優しさが必要になったとき、今なら、ロシアとウクライナが戦争をしているような状況では余計に響いてくる言葉。内容は少し難しいけど、それを子どもにも分かるせりふにした市川さんは本当にすごい」と話す。はるたくんについて、「傷だらけのウルトラマンをあえて選ぶことも、ばんそうこうを貼ることも、大人では考えつかない発想で、非常に子どもらしく、かわいい」と話す。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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