夜陰に紛れて敵陣に忍び込み、人知れずターゲットを暗殺する。屋根から屋根へと飛び移り、煙の中でドロンと消える。「忍者」と聞けば、そんなイメージがわいてくる。
ところが近年、そのイメージを変えるような記録が見つかった。北陸に残る古文書に、忍者の氏名や住所のほか、使っていた武器の種類や、給料の削減、リストラの様子までもが、つづられているというのだ。
これでは素性が筒抜けじゃないか。まったく忍んでいないのでは……。心の中でツッコミを入れながら、古文書のある福井県文書館を訪ねた。
県文書館の主任司書、長野栄俊(えいしゅん)さん(50)が出迎えてくれた。閲覧室のケースには、墨で書かれた冊子が並んでいた。福井藩や藩主だった松平家が残した史料群「松平文庫」の一部。主に江戸時代から明治にかけて書かれたものだ。黄ばんだ紙に書き込まれた藩政の記録や、城下の町並みの地図など、計約1万点を保管しているという。
江戸で次々にスカウト?
長野さんは、こうした古文書のあちこちに忍者に関わる記述があることに気づき、2017年秋から本格的に調べ始めた。当時上映していた映画「忍びの国」に触発され、忍者の聖地とも言われる「伊賀」(三重県)を旅行した後だったという。
たとえば、藩の組織体系をまとめた「組々之由来」には「忍之者 十人一組」との記述があり、お抱えの忍者が10人いたことが分かった。別の書物には江戸やその周辺で「機敏」な10人をリクルートしたとの記述があり、それと矛盾しない内容だった。
また、藩で働く者の名簿である「給帳」には「忍者十人 下役十人」とあり、忍者を補佐する「下役」が10人いたことも判明。忍者と下役を合わせて、忍者集団は計20人だったことが明らかになった。
人事の記録「禄高帳」には「…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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