この春、都心の歓楽街からにぎわいが消えた。新型コロナウイルスの感染拡大が続き、自治体のトップが次々と夜間営業の飲食店への出入り自粛を要請。このままでは、店を閉じるしかない――。閑散とした街で、多くの店が休業に追い込まれている。
駅周辺に約2900軒の飲食店がひしめき合う東京・新橋。いつもなら、歓迎会に繰り出した会社員らが路上にあふれる時期だが、4月最初の金曜日となった3日夜、駅前のSL広場もひっそりとしていた。会社員の大野卓矢さん(48)も「会社から飲み会は禁止されているから、直帰です」と寂しそうに改札に向かった。
駅近くにある創業53年のちゃんこ料理店「井筒」の店内も午後8時半の時点で、客は2人だけ。2代目店主の野村誠一郎さん(53)は「別の国に来たみたい」とこぼした。
「収束するまで休業致します」(居酒屋)
「感染拡大防止のため休業します」(バル)
あちこちで、閉じたままのシャッターにそんなお知らせが貼られている。
拡大するバーの従業員が店の前に臨時休業の貼り紙を貼っていた=2020年4月2日、東京・銀座
駅から歩いて3分ほどのダイニングバー「NARUTO」の店主、中西弘一さん(66)も1日夜、店のドアに「感染症対策の為、しばらくの間休業させて頂きます」と貼り出した。「こんな状況だからしょうがない。誰を恨むってわけにもいかないでしょ」
春の週末は普段なら、35席ある店内は満席だ。それが今年は、感染が広がり始めた2月半ばごろから少しずつ、客足が遠のいた。3月下旬になると、心配して様子を見にきてくれた顔なじみだけに。さらに小池百合子・東京都知事が3月末、夜間の外出を控えるよう呼びかけると、客はついにゼロになった。
拡大する新型コロナウイルスの影響で休業したことを知らせる貼り紙=2020年4月1日、東京都港区新橋4丁目
100人以上のパーティーのケータリングも急きょキャンセルになり、50万円以上の売り上げが吹き飛んだ。仕入れた食材はいまも、店に保管したままだ。
3月の売り上げは、昨年と比べて8割ほど減。それでも、家賃やローンの返済、リース代などの固定費が毎月80万円ほどかかる。「もう、あきらめちゃった」。休業を決めた。
■銀座のクラブは9…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル