常連が通い詰めた喫茶店、吹奏楽の聖地となったホールや街のランドマーク……。今年、惜しまれながら姿を消していきました。2023年もあと1日。
国内最古級の喫茶店として、東京都内にチェーン展開してきた「亜麻亜亭(アマーテ)」(カフェ・アマティ)。25日、池袋駅地下街にあった最後の店が閉店し、88年の歴史に幕を下ろした。
「時代の変化についていけなかった」。店を運営する齋藤商事の常務取締役、山内園美さん(57)は、声を落とす。
1935年に1号店を開き、90年ごろには11店舗を構えた。勤め人の男性客が席を埋め、1店舗で月2千万円を売り上げたこともあった。
2008年のリーマン・ショックで潮目が変わり、ここ数年は、新型コロナウイルス感染症の流行などで赤字が続いた。さらに物価高と人手不足が苦しい経営に追い打ちをかけた。
新宿駅ビル内の店を閉めた10月。最後の営業を終えた時、1号店から利用してきたという常連客からかけられた言葉が忘れられない。「好きだったのよ。私はどこに行けばいいの」と泣いてくれた。「こういう人に支えられてきたんだなって。本当にありがたいこと」。山内さんは話した。(山口啓太)
本当の「さよなら」ではなく
2012年から国内最大級の吹奏楽の大会「全日本吹奏楽コンクール」の中学校、高校の部が開かれてきた名古屋国際会議場センチュリーホール(名古屋市熱田区)は、「しばしのお別れ」となる。
「吹奏楽の聖地」とも呼ばれ、今年は10月21、22の両日に開かれた。改修工事に入るためコンクールは来年から別の会場で開催される。同ホールの中谷務館長(77)は、毎年のコンクールを欠かさず鑑賞してきた。「多くの若者のパワーが集まる2日間がなくなるのは、本当に残念。まだ実感がわかないが、秋が近付くにつれ徐々にさみしさを感じるだろう」
今月20日には、同ホールでコンクールの全国最多出場回数を誇る愛工大名電高(名古屋市)のクリスマスコンサートが開かれ、賛美歌など10曲以上の演奏に、約3千人の聴衆から大きな拍手が送られた。
改修は、27年3月に終了予定。27年以降のコンクールの会場は未定だが、同ホールが再び会場となる可能性がある。中谷館長は「数年後、再びホールに中高生の演奏が響くことを願っている。だから、本当の『サヨナラ』ではないと信じています」と話す。(井上昇)
街のランドマークが
大阪の中心地・梅田では、街のランドマークだった「大阪マルビル」が老朽化のため姿を消した。
地上30階建て、高さ約124メートルの円筒形で、大阪の高層ビルの先駆けとして1976年に開業。大阪第一ホテルや飲食店が入り、待ち合わせスポットとしても知られた。ビルを所有する大阪マルビルによると、跡地は2025年の大阪・関西万博の開催期間中にバスターミナルとして貸し出し、その後はより高層の新ビルを30年春に完成させる計画だ。
梅田では、JR大阪駅北側の商業地区を結ぶ「梅北地下道」も、再開発に伴って今年11月に完全に閉鎖された。(岩本修弥)
2023年に終了したもの
・テレビ朝日の長寿番組「タモリ倶楽部」が3月31日の深夜放送をもって終了。計1939回
・駅などで配られていたフリーマガジン「HOT PEPPER」が23年12月号で休刊。ウェブサイトに一本化
・法人向けPHS終了。1995年から始まったサービスで、21年に個人向けサービスが終了していた。28年の歴史に幕を下ろした
・電話回線を使ったインターネット接続の「フレッツADSL」が原則、1月に終了。光回線が整備されていない地域は残る
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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