しんどいけれど「全部生きている実感」 家族が、子どもたちが、いた

 「疲れたー」

 3月の夕暮れ。児童自立支援施設滋賀県立淡海学園(甲賀市土山町)の甲賀寮。小中学生の男子6人が、野球部のクラブ活動を終えて帰宅してきた。寮長で野球部監督の佐伯洸平さん(32)も一緒だ。

 「おかえりなさい」

 寮母の香菜さん(41)が出迎えた。甲賀寮は、学園で唯一の夫婦寮。佐伯さん夫妻が長男の優仁(はると)君(2)を育てながら、子どもたちと寝食を共にしている。

 夫妻には栗東市に自宅があるが、年に数えるほどしか帰っていない。2人は「一緒にいるのが当たり前すぎて、子どもたちを残して山を下りられない」と口をそろえる。

 優仁君は近くの保育園に預けている。頼れる親族は近くにいない。寮の子どもたちがもめている時に優仁君の手が離せず、関わることができない時がある。優仁君が泣いているのに構ってあげられないことも。

 香菜さんは「自分の子どもにも、寮の子にも、他の職員にも、みんなにごめんね、と思いながら働いています」。

 夫婦げんかの9割は仕事のことだ。「さっき、あの子にした対応おかしいけん、考えてよ」。夫婦だからズバズバと言ってしまうこともある。公私の境目がなく、しんどい時もあるが、香菜さんは「働くことも生活することも、全部生きている実感につながっている」という。

「そっとしていい」教わることも

 2人が夫婦寮を任されて5年…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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