高校中退者らが通う学習塾の塾長が、高卒認定試験をめざす人に向けた「ことば」のライブ授業をYouTubeで始めた。受験科目にはなく、試験の得点にも直結しない独自の授業をあえて配信するのはなぜなのか。(宮崎亮)
高卒中退者らに教える塾長がYouTubeで
塾長は、高校中退者や不登校の生徒が通う「TOB(トブ)塾」(本校・兵庫県西宮市)の山口真史(まさし)さん(40)。代表を務める一般社団法人のYouTubeチャンネル「new(ニュー)―look(ルック)ちゃんねる」で週1回、ライブ授業を配信している。
高卒認定試験は合格すれば大学などを受験でき、就職や資格試験にも生かせる。文部科学省が毎年8月と11月に実施。ここ数年は1回あたり1万人前後が受け、合格率は4割台だ。
山口さんは年明けから「国語」「現代社会」「数学」「英語」の科目別授業を配信するが、その前段として、9月末から「ことば」の授業を始めた。
10月20日のお題は「熟語は意味を暗記するだけじゃもったいない」。ホワイトボードを背にした山口さんが前を見すえて語る。「例えば『水筒』は『液体を入れておく容器』と暗記するんじゃなくて、『水』を入れる『筒』と覚えると、頭に入る確率は高まります」
「過去/未来」「人工/自然」などの「対義語」を説明した翌週は、「二元論は単純でわかりやすい。でも、『わかりやすさ』の裏でしっかり物事を見ることを忘れるリスクもあります」と強調した。
例示したのは「債務/債権」。「債務は借金だから悪く、債権は金を返してもらう権利だから良い」と単純に捉えると、将来への投資になる「良い借金」と、浪費のための「悪い借金」があるといった違いが見えなくなる、と説明した。
授業は20~30分。塾のYouTubeチャンネルには約2万5千回再生された高卒認定試験の解説動画などもある中で、「ことば」の視聴者数はまだ50人程度だ。山口さんが「誰も見てないYouTube」と語るこの授業。一体なぜ始めたのか。
記事後半では、山口さんの歩みと、動画を配信する理由を描きます。
「高卒認定試験がゴールじゃ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル