夏休みまっただ中。なのに、新型コロナウイルスのおかげで遠出がはばかられ、近所でも人出のあるところには行けやしない。じゃあ、何をしよう? そうだ。国内きっての「ヒスイの里」の新潟県糸魚川市でお宝を探そう!
どうせ探すなら、本物を拾ってみたい。あらかじめフォッサマグナミュージアムの学芸員補、小河原孝彦さんを訪ね、見分け方や探し方のコツを入れ知恵してもらった。
ヒスイが出るのは、日本海に注ぐ姫川と青海川の上流にある「ヒスイ峡」だ。ただ、川べりだと石に泥がついて見つけにくいという。海岸で探すことにした。「海流は東から西。姫川の河口より東側にも上がりますが、姫川から富山県寄りがいいでしょう」と小河原さん。姫川の河口西側の海岸に狙いを定めた。
訪れたのは6日。平日だから人影はまばらだ。「よしよし、お宝を独り占め」とよこしまな思いが頭をもたげた。
探し方のコツの一つ目は、白い石を探すということだ。ヒスイと言えば鮮やかな緑色を思い浮かべるが、小河原さんの教えではヒスイの元々の色は白。鉄やクロムが混じると緑、チタンやマンガンだと紫、チタンだけだと青、炭素だと黒になるという。
何はともあれ白い石だ。小鼻を膨らませて波打ち際へ。うわあ、白い石って無数にあるんですけど……。一つひとつは確認できない。いきなりやる気をそがれた。そこで思い出したのが二つ目のコツ。ヒスイは重いということだ。
寄せては返す波に、ほかよりワンテンポ遅れて流されるように見える石に狙いを定めた。海水はきれいだ。太陽を背にして日光の反射を防ぐと、石の動きははっきり目視できた。そんな石をすくい上げては目をこらした。
そこで三つ目のコツ。ヒスイは角張っている。川を下り、さらに波に洗われても角がとれない。丸い石は海に返した。1時間ほどで10個ほど「ヒスイ候補」を拾い集めた。
休憩していると、お年寄りの男性が寄ってきた。ヒスイ拾いですか? 「いやいや、何十年も来ているけどめったに見つけられないよ」。ヒスイ、見分けられます? 候補たちを男性に差し出す。「違う」「それも違う」……。触りもせず、一目見ただけで男性は繰り返す。男性の「鑑定」では、5~10センチの石は全滅だった。
じゃあ、とっておきだ。砂に半分埋まっていた25センチほどの石。角張っているし、しかも、フォッサマグナミュージアムで見たヒスイの原石のように、数ミリの鮮やかな緑が見えた(ように思える)石だ。
「違うな」。男性はにべもなく言った。「簡単には見つからんよ。テレビ番組を見ているとすぐ見つける人がいるが、よっぽど運がいいか、それとも……」。意味深な一言を残し、男性は去っていった。
諦めきれず、足元にあったこぶし大のまん丸な石を握った。ヒスイは割れにくいというからだ。数回打ち付けると、25センチの石のたたいた所が粉のようになる。あれ? もう数回たたくと、きれいに割れた。やけくそで緑色のところをたたくとやっぱり粉状になって鮮やかさは消えた。青カビにしか見えなかった。
めげずにさらに2時間を費やし、持ち帰った候補は10個。違うだろうなと思う石もあるが、いくつかは小河原さんが言う「乾くと光沢があり、ぬめっとした手触り」がある(と思っている)石だ。
小河原さんは鑑定してくれると言ってくれたが、ありがたく辞退した。新型コロナの影響で、フォッサマグナミュージアムは石の鑑定を来年3月末まで休止しているからだ。
帰省や遠出など、いろんなことを自粛している人が大勢いるのに、特別扱いしてもらうのは後ろめたい。だから、当選番号の発表を待つ宝くじを買ったようなものだと考えることにした。鑑定が再開されるまでわくわくしていられるし。
ヒスイ探しは誰でもできる。ずっと下を向いているし、話すことも忘れて没頭できるから、コロナ禍ではうってつけの“レジャー”ではないだろうか。ただ、気をつけなければならないことがある。熱中症だ。
■熱中症対策は欠か…
2種類
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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