最後は、あんこが守られ、次につながったお話を伝えたい。場所は京都。今年1月末に「京華堂利保(としやす)」は120年続いたのれんをおろした。最後の数日は、黒を基調に趣のある町家の店が、名残惜しむ人からの花束いっぱいに彩られた。
引退を決める時、主人の内藤正さん(74)には、そのままにできないことがあった。祖父の代に、茶道の武者小路千家の家元に銘をいただいたお菓子「濤々(とうとう)」の行く末だ。「濤」は波の音で、釜の湯のたぎる音を表している。家元お好みとして広く親しまれ、店だけのお菓子ではないと考えていた。
託したいと伝えたのが、祇園町で15代続く「鍵善良房(かぎぜんよしふさ)」の今西善也さん(49)だった。
今西さんとは、古くからの菓子店の集まりで気心が知れている。新しい世代への期待もある。何より今西さんの店のお菓子が、自分の大事にしてきたことに近く思えた。内藤さんは「はんなりといいますが、お菓子には京都らしい華があってほしい。茶味(ちゃみ)は持たせたい。私はそう心がけてきました」。
京都で家元お好みの銘菓「濤々」をつくっていた和菓子店が今年、のれんをおろしました。その「濤々」を引き継いだのが同じ京都の老舗和菓子店です。独特の味の世界をどう守っていったのでしょうか。
「濤々」は、特徴のあるお菓…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル