それでも守りたい 山あいの鉄路 廃線懸念のJR芸備線

小奴可(おぬか)駅から通学で利用する山下育(すぐる)さん(17)。高校がある3駅先の東城駅まで車内に1人だけの日が多いという。「車内はゆっくりできる時間。季節ごとに違う景色を見ていて全然飽きない」=2022年5月17日、広島県庄原市東城町、上田潤撮影

 広島と岡山の中国山地を走るJR芸備線。JR西日本は4月、ローカル線30区間の収支を初めて公表。広島県庄原市内にある同線の東城―備後落合駅間の収支率は全区間で最悪の0・4%。100円の収入を得るために2万5416円の経費がかかるとされた。「一気に路線廃止に進むのではないか」。沿線の住民には動揺が広がっている。

田植えが始まったばかりの田園地帯を走る芸備線=2022年5月8日、広島県庄原市西城町、上田潤撮影

 「平日はほとんど乗客がいない」。小奴可(おぬか)駅で窓口業務を受託する道後タクシーの林嘉啓(よしひろ)社長(60)はそう嘆く。業務を始めた1983年当初、切符の売り上げは月300万円以上あったが、今年3月は4千円ほど。JRからは5%の手数料を得るが、ほとんどもうからない。「イベントなどで一時的に乗客が増えてもJRの収入にならない。私が社長でも(運行を)やめたくなる」

 一方、利用者にとっては貴重な足。通学に小奴可駅を利用する山下育(すぐる)さん(17)は、高校がある3駅先の東城駅まで1人きりの日が多いという。「車内はゆっくりできる時間。季節ごとに違う景色を見ていて全然飽きない」。廃線になりバス通学になると、定期代の負担が倍以上になる。「せめて卒業するまでは残してほしい」と願う。

学校から帰宅し、小奴可(おぬか)駅で降りる山下育(すぐる)さん(17)。下校中の車内は、ほぼ毎日1人だけという。「もともと少なかったが、コロナでもっと減った気がする。(路線が)無くなるのも仕方がないのかな」=2022年5月17日、広島県庄原市東城町、上田潤撮影
廃校になった小学校の脇を走る芸備線。中山間地が広がる沿線は過疎化が進み、利用客の減少に歯止めがかかっていない=2022年5月17日、広島県庄原市東城町、上田潤撮影

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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