それは愛?それとも支配? 「生きる」教育で小5が学ぶ親密な関係性

 「え~!?」

 大阪市立田島南小学校5年1組。9月末、配られたプリントに目を通したアヤさんは顔を手で覆った。それっきり言葉が出ず、放心状態になった。

 5年生は「生きる」教育で、パートナーとの関係を学ぶ。直近2回の授業では、4、5人の班に分かれて架空のカップルをつくり、おでかけプランを念入りに考えてきた。

 アヤさんの班は、25歳プロボクサーの天心と23歳俳優の秋奈が東京ディズニーランド(TDL)に行く設定にした。出会いは、「2人が出ていたテレビ番組の打ち上げでイタリア料理店に行ったところ、席が隣になって話すうちに相手を好きになった」ということにした。ふたりの似顔絵を描き、空想を膨らませた。この授業を担当した小野太恵子先生(42)からは「午後9時には帰ってな~」と声がかかった。

架空のカップルのお出かけデートプラン

 アヤさんの班は話し合いながら、模造紙に2人の1日を書き込んでいった。

 午前7時半に天心が車で迎えに行き、途中のスタバで朝ごはんを食べ、午前8時15分にはTDLに到着。アヤさんたちは、乗り物やショーをインターネットで調べながら具体的な行動を決め、パレードを見て、午後8時半に天心が秋奈を自宅に送り届けるという内容にした。

 シンさんが「全部、天心のおごりじゃ!」と言うと、アヤさんは「少しぐらい払わせてもいいんやん」と言いながら、みなで楽しそうにプランを立てた。

 次の授業では「いい好き」を見つける課題が出された。この日は別所美佐子先生(53)が担当した。「恋人だからしてほしいことは何かな。好きな同士だからすることを考えて書いて。だけど、チューやハグは『なし』な」と呼びかけると、シンさんが「先生、手をつなぐのはいいんやろ~?」と質問。別所先生がうなずくと、アヤさんは「あ~、よかった」と満面の笑みを見せた。

 「おそろいのものを買う、身につける」「お互いの趣味の話をする」「お弁当をつくる」……。「いい好き」について、次々に子どもたちから意見が出た。シンさんは「楽しすぎるぜ~」と叫んだ。アヤさんも「あ~楽しかった!」と満足そうに授業を終えた。

 そんな楽しかったおでかけプラン作りのあと、9月末の「生きる」教育の最後の授業は、子どもたちにショックを与える内容が待っていた。

 「生きる」教育は、大阪市立生野南小学校(現・田島南小)で開発された、独自の教育プログラムです。自己肯定感を高め、自分と相手を大切にする方法を学ぶことを目指しています。9、10月に各学年で行われた授業を取材しました。9回にわたってお届けします。

■数年後のカップルに何が起こ…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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