515mm×728mmのB2サイズ用紙を埋め尽くすように描かれた無数の線。ズームアウトして全景を見ると、実は街になっていた――。そんな線画を約40時間かけて描いた作者に話を聞きました。
ツイッターで話題に
今月6日、指宿(@ibsukionsen)さんが「線画完成 全世界見てくれ」という文章とともにツイッター投稿した22秒の動画。手元がアップで映っていて、細かな線をコツコツと描く様子が収められています。
いったんペンを置くと画面がズームアウトし、全景が映ります。実はさきほどの細かな線で描いていたものは、びっしりと建物が並んだ街だったことが明かされます。
この投稿に対して、「細かすぎで尊敬します」「無限回廊だ」といったコメントが寄せられ、リツイートは3万、いいねは17万を超えています。
作者に聞きました
「製図ペンを使って、水彩紙の裏に厚紙を貼り付けてあるイラストボードに描きました。時間にすると大体40時間程度で仕上げました」と指宿さん。
細かいものを描くのが好きで、「延々とそんな作業をしてみたい」と思って始めたそうです。
ただ細かいだけの作品だと面白みがないので、構図を工夫。ゲームの「テトリス」に出てくるような図形を無数に描くことで、デコボコと立体感のある街並みを再現しました。
「街の中に道や緑などを入れてしまうとリアルに近づいてしまい、普通の空撮写真のようになってしまいます。あえてそういったリアルさを排除して『何だこの街?』と心に引っ掛かる密度の高い街にするよう心がけました」
ずっと机にひじを押しつけて描いていたせいか、途中から痛くてたまらなくなり、冷却シートを巻きつけて作業したといいます。
「まさかここまで反響が」
線画を終えた後は、影をつけて、外壁などの質感を出すためにさらに細かく描き込みをする作業が残っています。近日中に完成させて、都内の展示会に出す予定だそうです。
作品が話題になったことについては、こう話します。
「動画を撮った時は『ちょっと面白いからみんなに見てもらおう』程度の気持ちだったので、まさかここまで反響があるとは思っていませんでした。こんなご時世なので、『ステイホームを利用してこんな暇なことやってる人がいるんだな』と笑ってくれたり、『もしかしたらこういうの自分でも描けるかも』と始める人が出てきてくれたりしたら、うれしいです」
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指宿さんは、愛知県尾張旭市のギャラリー龍屋で18日まで開催されている「ZEROTEN 2020」に出展中。今回話題になった作品は制作中なので出されていません。(若松真平)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル