九州北部を襲った記録的大雨で、佐賀県武雄市北方町にある通称「ちゃんぽん街道」も甚大な冠水・浸水被害を受けた。ちゃんぽんを提供する7店舗が並び、県内外から麺好きが訪れる人気スポットだが、被災した一部店舗は再開のめどが立たない。それでも復活を心待ちにするファンのため、店主たちは前を向き、今できることに一つずつ取り組んでいる。
同市北方町を東西に通る国道34号。辺りにはかつて炭鉱があり、栄養満点の野菜とボリュームがあるちゃんぽんが労働者に好まれ、店が集まったとされる。7店舗が立ち並ぶ約3キロの区間がちゃんぽん街道で、大雨後、営業するのは3店舗にとどまる。
創業70年の「井手ちゃんぽん本店」も被災。大雨が降った8月28日朝、3代目の井手良輔さん(47)は約80センチも水に漬かった店内を目の当たりにし立ち尽くした。椅子が浮き、冷蔵庫や製氷機は横倒しになり、特注のゆで麺機と調理用バーナーは使い物にならなくなった。
「前日まで営業できていたのに、突然のことで言葉も出なかった」。座敷の畳を剥がし、麺や野菜などの食材は全て廃棄した。再開は10月以降になるという。
井手ちゃんぽんは県内外に12店舗を展開。モヤシやキャベツなどの野菜が山盛りの一品は「佐賀のソウルフード」として愛され、本店には多い日で約千人の客が訪れていた。
被災後は常連客が連日のように来店。「いつごろ再開?」「頑張って」と励まされ、飲み物やトイレットペーパーを差し入れていく。そんな気遣いに、井手さんは明るく振る舞う。「被災地に応援に入るボランティアに、おいしいちゃんぽんを食べてもらうためにも、一日も早く復活したい」と、泥で汚れた壁や厨房(ちゅうぼう)の掃除に汗を流す。
食堂「かみや」も浸水被害に遭った。テーブルや椅子、冷蔵庫は処分を余儀なくされ、再開には2~3カ月かかる見込みだ。
避難所に身を寄せる従業員の小路丸(しょうじまる)貴之さん(48)は、常連客や釣り仲間の手を借り、店内を黙々と片付ける。「多くの店が被災したが、みんな復活に向けて頑張っている。できる店からどんどん再開し、北方を盛り上げたい」と話す。
西日本新聞社
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