インスタグラムで発信して、若い世代がつらい気持ちを相談しやすくしたい――。親族を自殺で亡くした東京の大学生の提案で、NPO法人が30日、アカウントを開設した。いつも以上に生きづらさを感じる子どもらが増える夏休み明けの時期に、「心がやわらぎ、希望を感じてもらえる発信をしたい」という。
アカウントは、自殺対策に取り組むNPO法人「ライフリンク」(清水康之代表)が開いた。最初の投稿では「頼ってほしい相談窓口や 皆さんが抱えるつらさとの向き合い方など 学生メンバーが中心になって発信します」と伝え、無料電話相談「#いのちのSOS」、LINE相談「生きづらびっと」などを紹介した。プロフィル欄からも相談先や、死にたい思いを抱えつつ生きる人を紹介するNHKの企画「わたしはパパゲーノ」のサイトにリンクしている。
手がけたのは国際基督教大2年の佐藤碧衣(あおい)さん(20)。3年前、親族と中学時代の恩師を自殺で亡くした。自殺対策という言葉を知り、「自殺=(イコール)悪で、それを選んだ人を責めている」と感じた。「本人も周りもつらい経験だけれど、私だけは最後の選択を認めてあげたい気持ちだった」と言う。
大学の生命倫理の授業をきっかけに民間団体の活動を調べ、死者を責めてはいないと知って自分の誤解に気づいた。つらさから離れる方法を伝えて自殺を防ごうとしている点や、だれもが生きやすい社会を目指していることに共感も覚えた。NPOなどでの体験から学ぶ大学の授業の一環として、清水代表の話を聞いたうえで、ライフリンクの活動に参加させてもらうことにした。
「お守りのような発信に」
ただ、自分のような若い世代は、つらくなっても対処する方法を知らず、相談先も分からない。「否定されたり、傷つけられたりしたら」というおびえから誰かに連絡するのも不安で、相談の壁が高いと感じた。自らも、命を絶った身近な人のことを考えて涙が出たり、自分を責めたりして不安定になった。新型コロナウイルスの拡大で人と会わない日々が続き、心の内を話す機会もなかった。
それでも佐藤さんは、ライフリンクでの活動などを通して、自分の気持ちを客観的に見られるようになった。自殺の原因は複数あるケースが多いと知って自分を責める気持ちが少しやわらいだ。悲嘆からの回復プロセスである「グリーフワーク」について知り、孤独を抱えつつも人とつながる大切さを学んだ。
「そういう心の問題を、若い世代がもっと知る機会があればと思うようになりました」と話す。
インスタグラムを提案したのは、10代や20代がよく使うからだ。#(ハッシュタグ)やフォローなどの機能があり、発信が多くの利用者に届く。「インスタ映え」という言葉が流行したように写真や動画がメインで、明るい投稿が多いSNSだが、社会の課題に関する発信も増えてきた。ただ、メンタルヘルスに関わる情報提供は少ないと感じたので、ライフリンクにアカウントの開設を提案した。
今後、相談にのる人の手書きのメッセージを紹介したり、死にたいほどつらいと思いながらも生きようとしている人の物語を伝えたりする投稿を増やしていくという。
佐藤さんは「つらい気持ちの人の心がやわらぐお守りのような発信にしたい。もやもやした気分をちょっと手放し、小さくても明日への希望を感じてもらえたら」と話している。
ライフリンクアカウントのフォローはQRコードまたはURL(https://instagram.com/lifelink_jp
子どものための主な相談窓口
◆NPO法人チャイルドライン支援センターが運営するチャイルドライン(毎日午後4~9時)電話0120・99・7777
◆「24時間子供SOSダイヤル」電話0120・0・78310
◆いのちの電話フリーダイヤル(毎日午後4~9時)電話0120・783・556
◆児童相談所虐待対応ダイヤル(24時間)電話189
◆#いのちSOS(月曜は24時間、それ以外は午前10時~翌日午前0時、子ども以外も対象)0120・061・338
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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