福岡市の筑紫女学園大付属幼稚園に一昨年、「とりけんきゅうじょ」ができた。
元々は、「むしけんきゅうじょ」だった。虫好きの井上博子先生(37)が、担当していた年長児と作った。寒くなると虫は減ったが、鳥の声は聞こえた。「じゃあ、とりけんきゅうじょにしようよ」と子どもが言った。巣箱をひとつ、園庭の木に付けた。
実は博子先生は、鳥は苦手。「もし鳥が来たら奇跡」とも思っていた。でもその春、ヤマガラが五つの卵を産んだ。ひなの成長を見守っていたが、子どものいない早朝、巣箱はネコに襲われた。巣立ったのは3羽。「生きることは有り難い」と心に刻んだ。
昨年初めに作った新しい巣箱は、木の高い所に付け、ネコよけのとげも巻いた。その春は何も来なかったが、今年3月6日、巣箱に鳥が入るのを見たと子どもが教えてくれた。土のようなものが入っていた。「また奇跡が起きた」
今度の主はシジュウカラ。教頭先生たちと相談して、ドライブレコーダーを巣箱の天井に付け、廊下の電子黒板で観察できるようにした。同じころ、園庭の別の木のてっぺんには、キツツキの一種、コゲラが巣を作った。中は見えないが親鳥が行き来する。とりけんきゅうじょは、一気に忙しくなった。
新年度、博子先生は年中児の担当になった。「しじゅうからのおうち」の写真を絵日記のように貼りだした。
3月13日 ざいりょうをあつめて、ふかふかのおふとんをつくっているよ
4月1日 ぜんぶで8このたまごをあたためていくよ
15日 たまごがわれて、ひながうまれたよ
20日 あたまにくろいけがはえてきたよ
25日 めがひらいたよ
電子黒板には、巣箱の中の様子が映し出される。親鳥が来ると「きた!」「ごはんあげてる」「いもむしだ」。園じゅうの子どもが代わる代わる見入った。
卵は1日ひとつずつ産まれるけど、卵がかえるのは同時。殻は母鳥が食べる。ひなは逆立ちしてフンを出し、すぐ親がくわえて外に出す。子どもたちと一緒に「発見」しては、わくわくした。
ひなはぐんぐん大きくなった…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル