なかなか家を売らない不動産屋 「なぜ買うんですか」社長が問う理由

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編集委員・中島隆

 人生最大の買い物は家、という人がいます。真実だと思うかどうかは、人それぞれ。大阪市に「グラウンド」という不動産会社があります。設立は8年前、スタッフは社長と従業員あわせて4人。この会社、新築一戸建ての売買を仲介するとき、買う人からは手数料をもらいません。買いたい人に物件をなかなか紹介しません。理由は、社長の鈴木宏治さん(45)の半生を知れば分かります。

「俺は何に向いている?」

 守口市に生まれた。少年時代、弁護士を目指して家で勉強する父の背中を見ていた。インテリアコーディネーターだった母が家計を支えた。父が弁護士になると大きな家に引っ越し、車が高級車に変わった。

 鈴木少年は、弁護士になろうと、関西大の法学部に進む。4回生のときに司法試験を受け始める。それから試験制度が変わるまでの10年あまり、受け続け、落ち続け、断念した。

 ハローワークに行く。働いた経験はパチンコ屋でのバイトだけ、資格は運転免許だけ。そんな34歳には、就職先がない。友人らに「俺は何に向いてるやろ?」と聞いて回っていたら、ある人に言われた。

 「最近、家を買ったんやけど…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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