ライター・藤木TDCさん
小さな飲食店が軒を連ねる横丁を全国各地で取材していると、古めかしい雰囲気と強いにおいを放つ「共同便所」に出合うことがあります。アンモニアや芳香剤などが入りまじったあの悪臭になぜか引かれるのです。
1962年生まれ。著書に「東京戦後地図 ヤミ市跡を歩く」「消えゆく横丁」「ニッポンAV最尖端 欲望が生むクールジャパン」など。
今は再開発でなくなりましたが、仙台市の繁華街の東側に「東一センター」という横丁がありました。そこは、私が「かけ流し式」と呼ぶ共同便所のスタイルで、男性の小用は壁に向かって用を足し、下の溝に流れていくだけです。壁には何十年間のうちにさまざまな化学物質が付着して、ジャクソン・ポロックの絵のように抽象的な図柄になっていました。
近くの店で面白い話を聞きました。その共同便所を長年、掃除していた男性は、入ったときのにおいだけで、前夜の横丁がどのくらいにぎわったか、経験からわかった、というのです。
誰でも使える「公衆便所」と違…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル