30歳以下の若い女性の自殺が増えている。ことしはコロナ禍で一斉休校や自粛生活が強いられたほか、5月に女子プロレスラーの木村花さん、7月に俳優の三浦春馬さん、9月に女優の竹内結子さん、そして今月には、女性ロックバンド「赤い公園」の津野米咲さんの自殺が相次いで報じられた。専門家は「若年層の自殺対策の無策が招いた」と指摘する。はたして若い女性たちに何が起きているのだろうか。(ライター・渋井哲也)
若年層に効果的な自殺対策ができていない
まず、一般論として、日本の自殺者数は、女性よりも男性のほうが多く、10万人あたりの自殺死亡率も高い。 ピーク時の2003年は、年間計3万2845人(うち女性9464人)が自殺していたが、2012年以降、年間自殺者数が減少傾向にあり、2019年には2万169人(うち女性は6091人)まで減っていた。 背景には、2006年に自殺対策基本法が成立して、「自殺は個人の問題ではなく、社会的要因」として位置付けられたことがある。同年、貸金業規制法が改正されて、借金の総量規制と同時に利息の上限が決められたこともあり、中年男性の自殺者数が大幅に減少していった。 しかし、10代の自殺者数は減少の幅がせまく、自殺死亡率は上昇傾向にある。若年層に効果的な自殺対策ができていないためだ。
とくに女子中高生の増加率が顕著となっている
特に、ことしは、新型コロナウイルス感染拡大防止によって、全校一斉休校の処置がとられたり、非常事態宣言の外出自粛もあった。休校や宣言が解かれても、子どもたちにとって、重要である年度末から年度初めに学校に行けなかったことは、人間関係の形成に大きく響いたとする見方がある。 警察庁によると、2020年8月の1カ月間の自殺者数は、速報値で全国で計1854人。昨年2019年8月と比べて251人、16%増加した。うち女性は650人で、昨年より約40%も増えている。男性も6%増の1199人。自殺者数自体は男性のほうが多いが、女性の自殺が大幅に増加している。 とくに30代以下の女性の自殺は昨年より74%も増加し、193人が亡くなっている。 2020年9月も計1805人で、2019年9月と比べると、143人、8.6%増加した。ここでも女性は27.5%の増加となっている(男性は0.4%の増加)。 顕著なのは女子中高生だ。厚生労働省の「地域における自殺の基礎資料」に基づく筆者作成のグラフ1で、2018年1月から見てみると、女子中学生の月別自殺者数は、今年8月が最も多い(16人)。過去10年間の8月で見てみると、過去最多の自殺者数になっている。 女子高校生も同様の傾向だ(グラフ2)。過去10年で、8月で自殺者が20人を超えるのも初めてだった。女子大生の自殺者数もやはり同様で、8月の自殺者が10人を超えたのは、東日本大震災があった2011年と翌2012年以来となっている。 夏休み明けのタイミングで子どもたちの自殺が増えると言われている(9月1日問題)。ことしは夏休みが変則的で、8月中に夏休みが開けた地域が多い。夏休みが前倒しになったことで、9月1日問題も前倒しになったのではないかという見方もある。 自殺問題にくわしい中央大学客員研究員の高橋聡美さん(精神看護学)は次のように話す。 「若年層に限らず、全体で増えているので、社会全体の問題が大きいと思いますが、コロナ対策で、休校措置となり、子どもたちが犠牲になったことは、たしかです。しかも卒業、入学といった一生に一回の区切りをしっかりとつけないまま、新年度に突入して、友だちに会えず、とりわけ進学した子たちは新しい友だちができないまま夏を迎えました。心理的に孤独感を増強させたことは間違いないでしょう」(高橋さん) 警察庁の統計でも、ことし8月は、20歳未満の自殺についての「原因動機」で最も多かったのは「学校問題」だ。しかし、なぜ、女子中高生に顕著に自殺者が増えたのかの説明ができない。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース