今回の「いきもの目線」で取り上げるのは「マンボウ」。体の後ろ半分を切断したようなユニークな体形が人気だ。高さ7メートルの巨大な円柱水槽でマンボウを飼育、展示している横浜・八景島シーパラダイス(横浜市金沢区)の協力で、360度カメラを設置した。マンボウと一緒に、優雅に泳いでいる気分を味わってみてはいかが。
マンボウはフグ目に属し、日本では北海道から沖縄まで各地に生息。例年4月頃から数カ月間接岸してくる。成長すると体長3メートル、体重2トンを超すという。撮影時は、神奈川県横須賀市の定置網にかかり、飼育されている7匹のマンボウが泳いでいた。
ウェットスーツ姿の飼育員・楊為善さんに機材を手渡し、大水槽にカメラを設置。撮影時間は約30分。マンボウたちは警戒しているのか、カメラから離れてゆっくり回っている。カメラの高さ調整のため、エサを手にした楊さんが再び潜水。マンボウたちが楊さんに近づいてきた。
楊さんによると、ダイバーを認識して餌をねだる個体もいれば、近寄ってこない個体もいるという。自然界ではクラゲや小型の魚などを食べているが、飼育下では魚やエビをミキサーにかけ、ゼラチンで固めたものを食べさせている。
記者がガラス越しに撮影していると、一匹のマンボウが近寄ってきた。丸っこい目で、見つめられているようで愛らしい。すると、マンボウの目が閉じたように見えた。フグの仲間の特徴で、実際にはまぶたはなく、目の後ろから白い皮が伸びてきて目を覆い隠すため、目を閉じているように見えるという。
他にも、フグとマンボウには肋骨(ろっこつ)がないという共通点がある。楊さんによると、フグは体を膨らませることで体を守り、肋骨があると膨らむときに邪魔になるために無いという。マンボウは体が大きく成長するため、フグのように膨らむことはないが、骨格はフグの姿を受け継いでいるため、おなか周りには骨がないという。
また、マンボウには腹ビレと尾ビレはなく、尾ビレに見える部分は「舵(かじ)ビレ」と呼ばれ、方向転換などの役割を担っている。上下に直立している「背びれ」と「尻びれ」を同じ方向に動かすことができ、フグも背ビレと尻ビレをパタパタと動かして泳ぐという。
マンボウはストレスに弱く、飼育は難しいとされている。泳ぎの直進性が強いために水槽に激突しやすく、水槽にビニールシートを張って対応する水族館が多いが、八景島シーパラダイスでは円柱状の水槽に水流を作って壁への接触リスクを抑えているという。(竹谷俊之)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル