はやぶさ2が、カプセルを地球に落としたのは2020年12月6日。大気圏に再突入したカプセルは、夜空に火球のような光跡を残しながらオーストラリア南部の砂漠に落下し、すぐ回収された。
その9日後の15日、神奈川県相模原市のJAXA宇宙科学研究所で、カプセルの本格的な開封作業が始まった。クリーンルームで作業にあたるのは分析チームの数人。砂は入っているのか。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の津田雄一・プロジェクトマネージャはその瞬間を別の部屋でモニターを見ながら待っていた。
急にガッツポーズや万歳をする姿が見えた。「砂があったのか?」。でも、カプセルの映像には何も映っていない。やきもきする時間が続いた。すると、手元の電話が鳴った。「ありました。いやー、感動です、言葉がないっすよ」
興奮からか、電話口の報告は多弁だった。「いいから早く画像を見せてくれよ」。津田さんは、思わずそう思ったという。
1時間後。真っ黒な砂が画面いっぱいに映し出された映像を見た津田さんは「ぞくぞくして、言葉もなかった」。採取できた砂の量は、目標としていた0・1グラムを大幅に上回る約5・4グラム。「誰が何と言おうとプロジェクトが大成功したと実感が湧いたのは、この時でした」
その後、砂を大きさや色、形ごとにカタログ化する作業が半年続き、21年6月には、分析を担当する研究機関に砂が配られた。分析するのは、日米など14カ国269人の研究者たち。人類が初めて手にした貴重なサンプルは、世界中の研究者たちの垂涎(すいぜん)の的だった。
6年50億キロという途方もない旅を経て、探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」から持ち帰ったカプセル。中に入っていたわずかな砂から、生命の源ともいえるアミノ酸が見つかった。地上の生命は宇宙を漂う物質から誕生したのだろうか――。
SFのような説が決定的に
それから1年――。リュウグ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル