36人が亡くなり、33人が負傷した「京都アニメーション」の事件。警察は発生から10カ月が経過した5月27日、全身にやけどを負って重篤な状態に陥っていた青葉真司容疑者を殺人などの疑いで逮捕。複数の医師から「勾留に耐えられる」との診断を得たとして、大阪拘置所に勾留、取り調べも開始されることになった。 これに対し、青葉容疑者の弁護人はストレッチャーに乗り十分な意思疎通が図れない状態であり、勾留の必要はないとして決定の取り消しを求めて京都地裁に準抗告。しかし「罪証隠滅や逃亡の恐れがある」と棄却されたため、最高裁へ特別抗告を申し立てたが、これも退けられている。 【映像】京アニ放火殺人 青葉容疑者が出廷…マイクで答える
本来、容疑者が勾留される法的な要件は住所不定、証拠隠滅や逃亡の恐れのいずれかに該当する必要があるが、青葉容疑者の場合は全身を感染防止シートで覆われ、会話はできるものの自力歩行はできず、食事や排泄も介助を要する状況だという。
■「果たしてこのままで適正な取り調べができるのだろうか」
深澤諭史弁護士は「第一の“住所不定”については、自力で動けない人が住所不定なわけがないし、背中に翼でも生えているのかという話になる。第二に“証拠隠滅の恐れ”については、法的には口裏合わせをしたり、証拠を新しく作ったりすることもその中に入るが、ようやく会話ができるという人が、どうやって口裏合わせをするのか証拠もこの10カ月の間に全て警察の方に集まっているわけで、自力で動けない彼が警察署に忍び込んで証拠を盗んだり壊したりすることも考えられない。裁判所は第三者に依頼する可能性があるというが、彼が何億円も持っているとか、あるいは悪の組織の総帥であれば部下を使うことなども考えられるが、そんなこともないだろう。第三の逃亡についても全く同じことが言える。正直なところ、時間を使って説明することが虚しいくらいだし、アンケートを取って“要件に当てはまる”と答える人は100人に1人もいないのではないか」と一蹴する。
その上で、「これは要件を満たしたからやったというよりも、とりあえず捕まえても命に別状はなさそうだし、勾留した状態で取り調べをして、供述を取りたいということだと思う。もともと逮捕や勾留は証拠隠滅や逃亡を防止するためにすることで、取り調べるのが目的ではない。しかし実際問題として、逮捕して警察署に勾留することで取り調べができる。今回は設備の関係で場所は拘置所だが、おそらくそのような目的が裏にあるのではないか。それでも私としては、いまさら何をやっているのか、というのが正直な感想だ。会話ができるとはいえ自由に喋れる状態ではないだろうし、果たしてこのままで適正な取り調べができるかといえばそれは難しいだろう」とした。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース